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超訳百人一首 うた恋い。のtakのレビュー・感想・評価

超訳百人一首 うた恋い。(2012年製作のアニメ)
3.8
言葉を大切にする作品が好きだ。「うた恋い。」は百人一首のお話。古(いにしえ)の言葉を今どき現代人の共感を呼ぶように作るというのは、なかなか難しい。障子や御簾を挟んで、三十一文字で想いを伝え合うなんて、メールやSNS慣れした世代からすると焦ったくてしかたないかもしれない。

でも限られた言葉数で、込められた想いを読み取るって実にスリリング。しかも家や身分という不自由さの中で、恋する気持ちを密かに伝えるのだから、バレたら社会的な制裁を喰らうことだってありうる。道ならぬ色恋沙汰がバッシングされる昨今。確かに良くないことではあるけれど、節操がない人ばかりじゃなくて、真剣な想いがある人もいる。和歌で詠み込まれた気持ちに触れるのは、きっと学びになる。昔から思ってたけど、恋の和歌を授業で教える先生って、どう伝えるかって気をつかってたんだろうな。

「超訳百人一首 うた恋い。」のアニメ版は、そうした百人一首の世界をわかりやすく届けてくれる。藤原定家を語り部に、名だたる人物の歌の裏にあるドラマが面白い。

平安時代の女性の生き方を描いた紫式部の回。今の時代にも通ずる生きにくさ。身分違いの恋に身を焦がす藤原道雅の回。二人を隔てるいろんな事情は、現代なら解決できるものでもない。定家と式子内親王のエピソードが特に好き。三十一文字の自由と、秘めなければならない苦しみが胸にグッとくる。

OP曲がロック、ED曲がラップというのに、放送当時の僕は違和感を感じていた。けれど、言葉を大事にする仕事であるのはジャンルが違えども同じ。
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