あんへる

R.O.D -THE TV-のあんへるのレビュー・感想・評価

R.O.D -THE TV-(2003年製作のアニメ)
4.3
【2003年秋・2004年冬アニメ作品{全26話}】

紙は我らの天にあり。並べてこの世は事も無し。

本放送時、当時の某民放テレビ局深夜枠編成上のトラブルの煽りを諸に受け、最終話までTV放送されずに中途で打ち切られるという、謂わば時代と放送局に翻弄された悲劇の作品の一つ。
上記の影響からある種の“隠れ(ざるを得なかっ)た名作”という個人的な印象が未だにある。
因みにこの辺りにもし興味がある人は「フジテレビ深夜アニメショック」ってワードでGoogle先生とかに聞けばきっと詳しく教えてくれると思いますよ。

まあこの手の被害を被った作品は本作に限った話ではないんだが、こういった作品を礎に今のノイタミナ枠が成り立ってんだなぁとか、時代と共にアニメというコンテンツ周辺の歴史とそれなりに触れ合ってきた人間なんかは、たぶん配信で一気見してる最中で急に意味も無く無駄な感慨に浸ったりするんすよ。しらんけど。←
劇中の「世界はそういう風に出来ている」ってシンプルな台詞が今になってジワジワと効いてくる。ただそれだけの話なんだ、うん。

いい加減内容に関して触れると、本作は倉田英之氏のラノベ版を原作(原典)としたほぼオリジナルアニメ。(倉田氏は本作の全話脚本も担当)
しっかり作品の世界観を楽しみたい人は、一応前提条件として同名のOVA版から視聴することを推奨。
基本的にこのTV版はOVA版から地続きのストーリーになっているので、そこをすっ飛ばすと劇中で頻発する何やら重要そうな用語や、中盤以降の展開やキャラクターの意図が汲み取れずに置いてけぼりになるかもしれん。

物語を創り出す側も、それを消費する側も、皆等しく人間なんだと。
各々自身のダメな部分と共生しながら世界と向き合っていく彼女たちの生き様は、所謂ジョジョのテーマのような「人間讃歌」に近しいものを感じる。
画的にカッコいい〈紙使い〉の三姉妹によるペーパーアクションを売りに、当時の作画アニメ群の中でもかなりクオリティの高い印象はあったので、それだけでも満足度は折り紙付きではあるんだが、テーマ性やキャラクターの背景を深堀りしていくと更に見応えのある構造になっている重厚な作品だと思う。
またビブリオマニアという設定の趣が特異な味わいを醸している。

あと特筆すべきなのは音楽面かな。
OPがハチャメチャにキマってる。この岩崎琢のインスト曲は一度聴いたら忘れられない。
ビバップといいバッカーノといいガンソードといい、インスト曲が滅茶苦茶カッコいいOPってだけで無条件に作品に箔が付く。OPの重要性をわかっているアニメにまずハズレはねぇよ。
勿論劇伴もアガるし、後期EDアニメに最終盤へのちょっとしたギミックがあったりしてイチイチ芸が細かい所も好きなポイント。

やっぱり作り手の作家性や変態性の表現がダイレクトに伝わってくる作品って好きだな。
このくらいの年代のアニメ群の趣向の緻密さというか、この抽象的な味わい深さが良い感じに自分の懐古趣味を刺激してくれてキュンとする。


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[主題歌]

OP
 作曲・編曲 - 田中秀基 / 演奏 - YKZ「R.O.D」

ED
 (前期)kazami with Home Grown「Moments in The Sun」
 (後期)三浦理恵子「Confidence」

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