tak

ルパン三世 第1シリーズのtakのレビュー・感想・評価

ルパン三世 第1シリーズ(1971年製作のアニメ)
4.0
BS12の再放送で全話完走。この第1シリーズは1971年放送なので、僕は未就学児だった。中高生で第2シリーズを見た世代なので、僕が見てきたルパンはクラシックカーを乗り回して派手な活躍をする赤ジャケットのルパン三世。

緑ジャケットのルパンが活躍する第1シリーズは、前半と後半で作風がガラリと違う。前半はお子ちゃまに媚びることなんてまったくない、ハードボイルドでアダルトな雰囲気が今観ると楽しい。伝説のコチョコチョ棒にしても、ガンアクションにしても、男と女の話にしても、描写が徹底してクール。ルパンが追い詰められる魔毛狂介のエピソードや峰不二子の昔の相棒が登場する男の未練話など、ドラマ部分が面白いものがたくさん。

しかしそれは視聴率にはつながらず、シリーズ後半でテコ入れが行われる。クレジットに名前は出ないが、プロダクションの演出チームで中心となったのが宮崎駿。後半からコミカルな描写や失敗するエピソードが増え、決してカッコいい大泥棒というだけではない、人間味のあるルパン像が描かれる。愛車が小型車のフィアットになったのも後半。宮崎監督は、大泥棒だからと言って成功もあれば失敗もある。きらびやかなクラシックカー乗り回すんじゃなくて、意外と地味なのが泥棒として受け入れられやすいのではと考えたと聞く。このキャラクターの解釈変更が後の「カリオストロの城」につながっていく。特に元金庫破りの父親が誘拐された娘の奪還をルパンに依頼するエピソードは、ルパンの人間味と情に温かな気持ちになる。

第1シリーズを観た上で劇場版初期の「複製人間」と「カリオストロ」を見直すと、派手な第2シリーズ育ち世代があの頃感じた違和感を埋めてくれるに違いない。
tak

tak