あんへる

ガン×ソードのあんへるのレビュー・感想・評価

ガン×ソード(2005年製作のアニメ)
4.8
【2005年夏・秋アニメ作品{全26話}】

ゼロ年代の傑作ロボットアニメ。
死ぬほどカッコええインスト曲の激シブOPに男臭さとケレン味、厨二要素がビンビンに響く。

婚約者を殺された男の復讐劇と聞くと陰鬱な作風に傾きそうな感じはするが、そんな空気は微塵も感じないレベルでエンタメ性が突き抜けている。

コードギアス、リヴァイアス、プラネテス、スクライドと、名作揃いの谷口監督作品の中では世間的な知名度こそ微妙な線かもしれないが、それらに負けず劣らずの秀作であることは間違いない。

バックアロウが駄作認定され闇に葬られている理由は、今観ると本作との対比でよくわかるよ。
やろうとしている事はほぼ同じでも、要は演者の格が違う。(CVの事を言っている訳ではない)
つまりキャラの魅力が段違いなのだ。
敵味方問わず登場するのは基本的に頭のネジが2,3本外れてるような奴らのオンパレード。本作が傑作たる所以はそこにある。

バカで味音痴で童て…いや童帝の主人公ヴァンをはじめ、スピンオフを軽く3作品くらい作れそうなレベルでネタに困らない濃ゆいキャラたち。

特にヴィランの存在感と造形美が凄まじい。
所謂、勧善懲悪・絶対悪という単純な構造ではない。視点さえ変えれば敵味方どちらも正義であり悪でもある。
まあ二律背反する正義観なんて、今時大して珍しくもない描かれ方なんだけど、キャラクターに魅力があるだけで物語の説得力が格段に増す。

ラスボスであるカギ爪の男は、カリスマ性の権化みたいな存在。
ヴァンとレイの恋人を殺した復讐劇に於ける典型的な肩書き付きの仇役ではあるが、ただ敵というだけの枠に収まりきらない魅力で溢れている。
彼の思想自体は劇中の誰よりも平和的で生命愛に満ちている。だが同時に人間としてどうしようもなく“破綻”している。
世界を愛するが故に人間の性に絶望しているという矛盾を抱えた上での行動原理、根底にあるのは慈愛の心のはずなのに人を救うどころが破滅しかもたらさない。
そんな致命的な歪みを孕んだキャラだからこそ不気味なまでの魅力を放つ。
それこそHELLSINGの少佐やPSYCHO-PASSの槙島聖護クラスの完成されたカリスマヴィランだと思うね。

ヴァンが劇中で体現したのは、謂わば初志貫徹の美学だよね。
男が心に決めた事はちょっとやそっとの事くらいで覆しちゃならんよ。
「復讐ダメ、ゼッタイ」なんて言ってくる奴らを片っ端から殴って黙らせるくらいの気概が時に男には必要なんだよ、てきな。
必要悪も突き詰めれば立派な大義名分になるんよ。

おかげでだいぶ男臭くて暑苦しい作風にはなっていると思うが、《痛快娯楽復讐劇》ってキャッチコピーに恥じない堂々たる仕上がりと言える。
あと一応言っとくけど、この作品に“繊細さ”なんてもんを求めるのはハッキリ言ってお門違いよ。そもそも大味さが最大の売りみたいな構造ではあるから。
そういう人の為にコードギアスやプラネテスって作品があるんで。


因みに個人的に一番好きなキャラはダントツでファサリナさんっすね。
倉田雅世さんが演じるキャラは高確率で自分の性癖に刺さるから困るw


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[主題歌]

OP
 演奏 - 中川幸太郎 feat. 鬼太鼓座「GUN×SWORD」

ED
 Okino, Shuntaro「A Rising Tide」「A Rising Tide (acoustic)」「Calling you」
 Hitomi「Paradiso」
 カルメン(井上喜久子)、ウェンディ(桑島法子)、ユキコ(雪野五月)、プリシラ(千葉紗子)「S・O・S」
 

[挿入歌]

 ユキコ(雪野五月)「虹の彼方」

 Hitomi「La speranza」

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