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少女革命ウテナの映画初心者のレビュー・感想・評価

少女革命ウテナ(1997年製作のアニメ)
3.7
2度鑑賞。局所的に見たら面白いけれど、大域的に見たらそんなに...な作品。面白い回がいくつもあり、良い作品、細田守の活躍っぷりが最高。ただ大きな欠点がいくつもある。イクニ作品の最高傑作はピングドラムですかね、ウテナの欠点だと思う箇所が大きく改善されてる。

ヘンテコな演出が随所にあり、テンポが悪くなっていること。バンクシーンが多すぎてテンポが悪くなっていること、戦闘シーンが毎回単調で退屈なことが特に欠点。

「サスペリア」を彷彿とさせる異質な世界観。学校の秘密まではいきませんが、魔女の登場によってサスペリアっぽいなぁ、なんせメインテーマがそれっぽいんですもの。「デミアン」を引用するように、大人へと近づく、変わらないといけないというテーマもあります。

お気に入り回:4話、6話、7話、9話、10話(Bパート)、14話、18話、19話、20話、24話、29話、32話、33話、34話

[1話~13話 生徒会編]
[14~24話 黒薔薇編]
[25話~39話 鳳暁生編]

【1話】[緑髪先輩とバトル回]
記憶より面白い1話でした。1回目の鑑賞時は設定がよくわからず、落ち着いた空気感でこのアニメ面白いのか?と思った記憶があります。しかし2回目の鑑賞で、その洗練された空気感、そしてセルワークの巧さ、定番の「かしらかしら~ご存じかしら~」で盛り上がってしまった。こういったアニメは日朝のプリキュアと同様に回を重ねてその定番の構成に慣れ親しみ面白く感じるタイプなんだなと痛感しました。

【2話】[緑髪先輩と再戦]
チュチュ登場回。小動物キャラ、特に幾原さんの小動物の描き方が良いんですよねどの作品も。チュチュがいるだけで雰囲気が和やか。1話で描かれたお決まり演出が今回も登場し、「定型的」な構成のアニメだとわからせてくれます。記憶より面白い

【3話】[赤髪先輩と交流、ダンスパーティー]
お嬢様キャラ達が登場。いやがらせをしてくる学園もの作品の定番。記憶だとこっからお嬢様キャラがほぼギャグキャラの扱いになっていったはずですが初登場はこんなにも嫌なお嬢様だったのね。2人で踊るシーンは優雅で良いです

【4話】[青髪の1年生回]
いやぁ、面白い。脚本も演出もキレキレ。サブタイトルの入りがめちゃくちゃかっこいい。美しい旋律のメロディ「光挿す庭」、ピアノの音、静の状態から話は始まり、中盤にかけてのお嬢様キャラによる嫌がらせ作戦がどれも面白い。カタツムリやアオダイショウ、タコでひっかけようとすると、右斜め上の現実によって作戦が失敗するテンポの良さ。締めはピアノの音。序盤と対比させ、非常にシンメトリックで美しい構成でした。

【5話】[青髪との決闘回]
4話の対比のような回。前回の陽気さは消え、優美で静かで美しい。ピアノが鳴り響き、突然ピアノの音が消えると緊張感高まりますよね、良い強調演出。

【6話】[お嬢様恋愛回]
ウテナ、ギャグ回こそ光るアニメだと思わせます。狂ってて面白い。校内を走り回る馬、暴れカンガルーと色々おかしな世界観でおかしな展開をみせてくる、それだけで面白い。悪運が強すぎるお嬢様、少年に恋をしてしまうお嬢様。「つわぶき~」→指パッチンの流れで笑っちゃう。

【7話】[細田守演出回、有栖川樹璃登場回]
最高の出来。絵も演出も素晴らしい。特に、BGMが急に止まり緊張が生まれる演出がとてもうまい。さすが細田守。序盤から一気に引き込まれる、繊細で気持ちに寄り添った演出が良い。細田守お得意の対比構図も良かった。

【8話】[カレーギャグ回]
カレー料理で爆発して2人が入れ替わる突拍子もない展開。そして、カレーを探すためにインドへ向かうお嬢様軍団と無茶苦茶。それでいながら、2人が入れ替わったことでお互いの立場や状況がわかるのも良いです。こういう意味不明な回があるのはTVシリーズの醍醐味。

【9話】[重要回|過去、城は何なのか]
過去シーンが最高。3つの棺、2つは両親、そして1つは主人公のためのもの。主人公は棺で眠り続け、現実から出ない。そして出会う王子様。
「死」「永遠などない」が重苦しく迫っている感じがとても良い。
ラストシーンにかけての演出も良いです、特に電話のシーン最高。

【10話】[緑髪の退学 | 新たなデュエリスト]
Bパート最高。生徒会長とお嬢様のななみの回想、そして現在の対比。素晴らしい。現在のやるせなさが良い。「猫」のプレゼントの一連がとても印象的。
日記を焼却炉に燃やす序盤の展開だけで、おっ...となりますね。夜のキスをするしないのシーン、間が良いっすね。

【11話】[生徒会長との決闘、ウテナの敗北]
ウテナが敗北しますが、全体的に繋ぎな印象。アンシーとの関係性がリセットされる、それがやりたかったんでしょう・
王子様とは誰なのかなど本作の謎になっている部分に触れつつも特に前進はせず、かつ特徴的な演出も無かった。

【12話】[生徒会長との再決闘|アンシーを取り戻す]
アンシーとの別れ、そして取り戻す回。お話としては転調ですが、全体的に低調気味。女学生の服を着るウテナ。変わってしまった日常が淡々と描かれ、後半に再決闘。いつものバンクシーンでBGMが変わるぐらいでしたね。

【13話】[総集編]
ただの総集編ではなく、アンシーの兄「鳳暁生」の初登場回でもあります。ただそれは最初の冒頭だけなので安心設計

【14話】[香苗との闘い]
細田守演出回。黒薔薇編のスタート。黒薔薇会の「御影草時」、理事長の娘「鳳香苗」、「千唾馬宮」の初登場回。演出がキレキレ。懺悔シーンや決闘場でのホラー演出は見事。こういう異質な演出を見せるの本当にうまい

【15話】[ミッキー妹との闘い]
コンテ巧い回ですね。冒頭の蓄音機、生徒会長のショットの美しさが。プールでの間、目の動きでリズムを作ったりも良い。メトロノームの音が響き渡る音楽室とか雰囲気を感じる。

【16話】[カウベル回]
1番記憶に残っていた回でした。カウベルを人間用のものと思ってつけるお嬢様によるギャグ回。どんどん牛になっていくお嬢様の展開がおかしい。ウテナのギャグ回はとてもシュールで良いですよね。

【17話】[樹里先輩と因縁の女子生徒との決闘]
ガラス戸に映った姿と実際の姿が異なって見える演出がとても素敵。Bパート冒頭の淡い色合いも良い。樹里先輩から剣が抜けるシーケンスなど良い演出だなと思う。

【18話】[つわぶきとの決闘]
コンテが特徴的で良い回ですね。子供と大人の違い、大人になるということ。大人になりたい鬱屈した感情、そして雨が印象的。お嬢様とつわぶきがドアで話し合う一連が効果的。

【19話】[玉ねぎ王子の恋]
良いところが多い回ですが特に音楽。チェロによるメインテーマの優美さで一気にひきこまれる。中盤、終盤でも音楽良いです。コンテ演出も良いです。特に夜のシーンは無音となって雰囲気を感じさせる。

主人公のクライメイトの若葉の過去。「玉ねぎ王子」と呼ばれる美少年の初心さが良いです。もうキュンキュンしちゃう。

【20話】[若葉との決闘]
細田守回。黒薔薇編の中でも強烈な印象を残す回ですね。何者にもなれない、何者かになれたと思うと崩れ去る。その怨念、儚さを感じる回。
もう中盤あたりから泣いちゃいますね。輝いている若葉、そして2週目なのでこれが崩れ去ることを知っている。結局言うと、緑色の先輩がアンシーと下の名前で呼ぶのが悪いのですが。
細田守演出もかなり効いています。特にコミカルなシーンとして、若葉が右から左へと高速で移動するカットを連続させる、あえて背景だけのカットにしてセリフを強調させる、細田守らしい演出。ロケーションとしても長い階段を水平に捉えるなど細田守の癖を感じるカットも。
「でも今は、でも今は」とニュアンスを変える声優の演技も見事

【21話】[お嬢様キャラの子分との決闘]
お嬢様キャラの子分の回。TVシリーズだからこそ描けるキャラですよね。こき使い荒く、自分は所詮下っ端でしかない、そういったキャラのもがきを描く。雨のシーンが良いですよね、演出が巧い。また、懺悔シーンのセリフ一連も良い。

【22話】[御影の過去]
今までの話数の中で最も地味な話数と思います。黒薔薇会を結成する前日譚の内容ですが、ずっとローテンション、そして癖の強い演出の数々。静かに狂ってる。脚本の時点でどうなってたんだろう。

【23話】[御影との決闘]
橋本カツヨ回。細田守回の中でワーストだと思います、強いシーケンスがあまりない。黒薔薇編の実質的最終回。スライドしまくって緊迫させる演出は良いですが、他の話数でもあったので目新しさは薄いですね。決闘中に間宮はすでに死んでいる、館は無くなっているという、今まで見てきたのは集団幻覚だったのだろうか、そういった謎が深まります。
じわっ~と首をまわすとかは細田守だなぁって感じです。

【24話】[総集編+α]
総集編かと思いきやギャグ回。過去のエピソードを勝手に改変して、七海の手柄になっていたり、ウテナとアンシー、七海のトリオ漫才。視力検査風に「ややややや...や」とか面白い。意味が不明さで全開なのでウテナでしか見れない回。

【25話】[緑色の髪の先輩との決闘]
鳳暁生編スタート。きました、例の車シーン「世界の果てを見せてあげよう」!!決闘バンクシーンの変更、BGMの変更、EDの変更と終盤に入ってきた感があります。緑色の髪の先輩との決闘とあって1話と対になるような感じがあります。意味不明な世界がまたより一層変な世界になってるのが良いですよね。

【26話】[光さす庭]
Aパート:庭で話す主人公とアンシーのシーン。セリフを意図的に飛ばす演出が凄いです。また、車で急に無音になる演出も良い。
お話として、ミッキーとの再決闘ですが過去の話と雰囲気が似ているためか、ほとんど既視感があるものでした。

【27話】[七海の卵回]
七海が卵を産んだと勘違いして、それを周りに隠すという意味不明な回。突飛ですがギャグのキレは少ないので満足度が比較的低いです。
ただ、「こんにちは、赤ちゃん」を流す狂気でしょ。この世界観で日本の古い曲が使われてるのが面白い。

【28話】
新たな先輩:土屋先輩の登場。同じフェンシング部とあって樹里先輩、そして樹里の因縁の女子生徒を中心に描いた回。ポッと出のキャラと戦うだけなので、、29話の前振り的な回ですね。

【29話】
脚本コンテ:細田守回。コンテ以上に脚本、特にラストシーンの脚本が素晴らしいです。それ以前はまぁ細田守回にしたら普通の演出、話なのですが完全にラストシーンでもっていかれる。細田守にとっての「母をたずねて三千里」オマージュだったのかも。最後に知る「死」という事実の展開は母をたずねてのワンシーンと似ている。

【30話】
「ばっはは~い」。怪しげなアンシーがとても印象的。音楽が良いですね。自分が恋をするのは王子様だけ、そう思いながらも別の人に恋をするウテナを中心に描かれた回でした。

【31話】
全体的に「恋」を描いている。コンテでは口を強調したり、その唇の描写が性的に感じる。血の繋がりを重視している七実のメインの回。血液型をきっかけに兄と自分の血の繋がりは無いのではないかと疑問に思う七実を描く。
終盤の数分間が良いです。「どこ行くの?」「おトイレ」の返事も良いですし、そこから、不穏さ全開の音楽と共にアンシー兄弟での性交を思わせる描写、不安になる七実が良い。

【32話】
胸が苦しい回です。31話の続き、血がつながってない兄弟、唯一の心のよりどころだった兄の消失、その悲しみ。あれだけギャグキャラだった七実がここまでドラマ性のあるキャラへとなっていくのはTVシリーズだからこそ。アイデンティティが揺らぎまくってるのが最高です。

【33話】
細田守回。総集編。新規パートがもちろんこのアニメならあるのですが、そのパートの切味がとても良い。カット割りがキレキレで、音がぶつ切りになったり、演出効果が高い。何気に新規パートが結構多いのでかなり特殊です。ウテナと理事長が性行為しているような匂わせがあるのも良いですね。そして34話の予告が文句が最高です。

【34話】
お話的に非常に重要な回。主人公の過去を描く。ウテナは毎回紋切型の構成ですが、その構成が破壊されることで、より強く印象付ける。今回は冒頭から、影絵少女の登場、劇の鑑賞、そして主人公の過去。なぜ、彼女は王子様になろうとするのか、なぜバラの刻印の指輪をもっているのか。
魔女という設定の登場。魔女として扱われた女性アンシーを救うため、彼女は戦う。
「やがて女性になってしまう。」「なる。王子様になる。」

【35話】
終盤の雰囲気ですね。Bパートは劇場版ウテナに近い絵があったり、絵の精巧さがありました。なぜ決闘するのか、そして最後の決闘の前振り。彼等の行く末を見ましょう。

【36話】
鼻風船のチュチュが可愛すぎる!!!前回と違って作画のクオリティが下がってましたね。夜の決闘広場でオーロラが輝いているイメージが良いっすよねぇ。最後の決闘だけに気合を入れて欲しかった。このアニメ、基本決闘シーンはつまらないのは一貫してたな。

【37話】
世界を革命する者となった主人公。the終盤という感じで中身はあまりない空虚な回でした。手紙を引きちぎり、紙切れが2人を覆う序盤のシーンが好きですね。次の回への引きも美しい。絵が濃くなり、劇場版の時を彷彿とさせる。

【38話】
前回の直後からスタート。最後の決闘。理事長 vs 主人公。口論からの物理戦なのですが、この作品そもそも決闘シーンは面白くないので、全体的に微妙ですね。

【39話】
最終回。自己犠牲の物語へと帰着していく。今見たら、めちゃくちゃエヴァ破ですね。ウテナとアンシーが手を繋ごうと必死に手を伸ばす、一生懸命な感じに心打たれます。最終回としての満足度はさほど。
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