レインウォッチャー

伊藤潤二『マニアック』のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

伊藤潤二『マニアック』(2023年製作のアニメ)
4.0
前シリーズ『コレクション』から5年を経て、netflix配信で実現したアニメ化第二弾。
長い月日だったけれど、まずはこのトラウマの種が世界散布される快挙に祝福を。仏アングレーム国際漫画祭での受賞なども後押しに奏功したのだろうか。

前回からの比較で最も嬉しいのは、やはり作画の安定感だ。全体が底上げされていて、変なストレスなく楽しむことができる。

『マニアック』というタイトル通り、エピソードはよりコアな選出。とはいえ、こちらから先に観ても殆ど問題はないと思う。
中でも、代表作のひとつ『首吊り気球』(3話)は間違いなくハイライト、潤二ワールドを知らない方にもまず名刺がわりにお渡ししたい、いや懐に捩じ込みたい。

ファン目線からすると、本編は勿論のことサブコンテンツの充実度にQOLが累乗で爆上がり。
YouTubeチャンネルで伊藤氏本人が各話に関する雑感を語っていたり、時を同じくして刊行された初のエッセイ『不気味の穴』では今シリーズに含まれる多くのエピソードやキャラクターについての解説や設計図が読める。生きてると良いことあるよね。

前回・今回で目ぼしい作品は浚った感もあるけれど、まだまだ残弾はゴロゴロしている。
忘れられない名作『うめく排水管』、中長編的スケール感の『うずまき』、そしてわたしの最推しキャラ『七癖曲美』…

次はもっと早く機会が巡ってくるよう老若男女多くの人に観てほしいし、常識と人生を脱臼してほしい。