エイガスキー

葬送のフリーレンのエイガスキーのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
5.0
まだ全てのアニメが終わったわけじゃないが、個人的に2023年秋、2024年冬と2クールに渡りトップを独走した作品。
原作の良いところはそのままに、足りない部分や説明の余地がある部分は高い理解度で補完し、理想的な漫画原作のアニメ化になっていたと思う。
ぜひ原作・アニメ共に最後まで終わらせてほしい。


以下は最初の3話を金ローで見た時の過去の感想。
3話見ただけじゃ浅いことしかわからないよな(笑)。


このアニメのすごいところその1ー!
「構図」
5層くらいの多重レイヤーを左右に動かしてあたかもキャラの周りを高速で回ってるような構図はよく見かけるが、このアニメでは同じことを上下でやって流れる景色のダイナミックさと奥行き感を出した。
第1話のラスト付近。
一瞬だったがこんな構図を見たのは宮崎駿が構図を担当した『赤毛のアン』の第1話以来。
衝撃を受けた。

このアニメのすごいところその2ー!
「歩き方」
このアニメでは歩きのシーンが多いが、基本的に3通りの歩き方を見せている。
1つ目は正面から見たバストショット絵。
キャラの頭部を上下左右の横8の字を描くように動かして動きで歩いている様子を描いている。
2つ目は横から見た絵。
この時はキャラが上下にしか動かない。
正面絵よりちょっと絵が難しい分動きを減らしている。
3つ目は斜め上の俯瞰から見た絵。
この時キャラは揺れない。
斜め上方向へ歩いているキャラを俯瞰で見るという、かなり難しい絵なので揺れさせたら大変。
このように視点によって動きに強弱をつけ、作画の労力を平均化している。
かなり計算された絵作り。
ちなみにキャラの足の長さによる歩幅の違いからくる揺れの間隔の違いを当たり前のように描いていた。
金と時間をかければそりゃあ良い作画になるが、限られた予算、限られた時間の中でどれだけ良い作画を見せられるか。
その工夫が上手い。
『Do It yourself 』を彷彿とさせる。

このアニメのすごいところその3ー!
「溜め」
なにか動作を起こす前の溜めをしっかり描いており、動きに強いメリハリをつけている。
最新話(5話?)で言うとフリーレンがドアの前で手に持った紙袋を持ち直す際、一度紙袋を下に下げて一瞬溜めてから上にガンッと持ち上げて、とても現実的で面白い動きになっている。
斧を振り下ろす際の後ろ手での溜めもそう。

このアニメのすごいところその4ー!
「音楽と使っている楽器」
全体的に西欧民謡風の音楽が良い。
特によく「ヒンメルが亡くなってから何年後……」で流れていた音楽。
楽器はバイオリンはわかるけど、もう一つはなんだろうか。
普通に考えればクラシックギターっぽいけどこのアニメのディティールへのこだわりはすごいからもしかしたらリュートを使っているかも。
バイオリンとリュートなんてまさしく中世ヨーロッパの雰囲気。
しかもバイオリンの音の乾き具合。
広いスタジオで録音したようなしっとりとしたリヴァーヴはかかっておらず、目の前で演奏しているような雑でキレのある音が良い。
こんな音を選択できる音響班のスタッフもすごい。

話は『江戸前エルフ』の中で足元にうっすら流れていた「多種族間による寿命の違いの別れ」をメインにした物語で、今風で言えばすごくエモい!
話がよくわからないとかどうせ強くてニューゲームでしょとか言う人にわかりやすい例えで説明すると、この話は昔飼ってた犬と死別してから何年も後に、ふと何気なくその犬のことを思い出して一緒に散歩した道をもう一度辿ってみよう、という話。
その散歩の途中で、腐食した電信柱の根元を見て「そういえばあいつはここでいつもオシッコしてたな」とか、道端にふと目をやると昔無くしたと思っていた人形が落ちてて「あいつこの人形にヤキモチ妬いてたけどこんなところに隠してたのか」とか、散歩のたびに喧嘩していた他所の子犬が今は老犬になって寝ているだとか、そういう「犬が確かにいた証」をめぐる話。
原作は読んでないからなんとも言えないが、アニメに関してはだいたいこんな感じで合ってると思う。

この話にしてこの作画にしてこの音楽。
素晴らしすぎる。

もう全部すごいなこのアニメは!