クドゥー

響け!ユーフォニアムのクドゥーのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム(2015年製作のアニメ)
5.0
『そして次の曲が始まり、音楽は鳴り止まない』

全国大会出場を目指す高校吹奏楽部の青春の日々を描く京都アニメーション制作作品。あどけない久美子の声を聴くだけで今となっては泣けてきてしまう。過ぎ去った時間は戻らなくても、思いを馳せれば何度でも出会えうことができる。

第一回「ようこそハイスクール」
→びっくりするぐらいダウナー的な自己分析から始める新生活、そして特別な何かが始まる予感。走り出したら止まらないOP入りとかBパート入りが最高。新しい友は彼女をリセットさせてくれる、お姉ちゃんとの思い出と共に。

第二回「よろしくユーフォニアム」
→巻き込まれ主人公探偵として覚醒するテレビシリーズとストイックな劇場版との分岐点。久美子にユーフォをやらせるために外堀から埋めていくあすか先輩が最高。アリバイ作りをし続けてきた人生という、言葉と思いが染みてくる。

第三回「初めてアンサンブル」
→「なんですか、これ」の滝先生と「なんなんですか、あの人」のあすか先輩の吹奏楽部。部員としての顔と友としての顔は、自然と使い分けられる。他の楽器へ行きかけた時と同じ、いつだって麗奈のトランペットの音が久美子をユーフォに引き寄せる。

第四回「うたうよソルフェージュ」
→「会議」に始まり「合奏」で終わる北宇治ストイックが動き出す回。いまだユーフォには本気になっていない久美子の、麗奈を前に本気の片鱗を見せて微笑ましい。二人のやり取りがむず痒すぎて、ギャグ顔なしでは直視できない。

第五回「ただいまフェスティバル」
→先輩が年上の友人に戻っていく予感、本気になった人だけが久美子の視界に残ってゆく。謎ステップより謎な麗奈の微笑みは彼女が観た夢なのかもしれない。ほんの一瞬だけが切り取られたこの世界のものではないような美しさで。

第六回「きらきらチューバ」
→悪意のないどこまでも遠く羽ばたこうとする向上心に潜む魔物。「麗奈っぽい」の前に「高坂さんらしい」の素敵な仕返し。音を楽しむ小休止の中でも、数回前から新たなトラブルの火種が巻かれるシリーズ構成美が確立されている。

第七回「なきむしサクソフォン」
→厚い仮面の内にある「私は楽器と戯れるためにここにいるんだから」という真実。受験のことも去年のことも体の良い言い訳になってしまいそうな、ひとりだけ違うものを見ている特別な存在がいる。誰も彼女を意識することからは逃れられない。

第八回「おまつりトライアングル」
→言わずとしれたアニメーションの作品国宝。三角関係の皮を被った惹かれ合う二人だけの引力、初めて感じた気持ちを可視化して可聴化した唯一無二の表現を超えた何か。何不自由ない少女に「命を落としても構わない」と思わせる瞬間がここにある。

第九回「おねがいオーディション」
→子どもの頃のがずっと厳しい勝負の世界に身を投じていたと、大人になればなるほどに実感する。ここにいる全員の恥じない努力の結果、呼ばれることのない名前がある、報われなかった想いがある。愛と死以外にドラマはある。

第十回「まっすぐトランペット」
→辛かった過去が思いがけない形で救われる一期で一番好きなシーン。これから先も久美子は夏紀だけは自分とおなじ気持ちだと言い切る、あすかの時も奏の時でも。頑張ってきたのを誰かから認めてもらえるということ、その温かさを知っているから。

第十一回「おかえりオーディション」
→孤高の「特別」とは少し違う。誰かのために流す涙で人を惹きつけていくカリスマ性、部長の適性として連綿と引き継がれていく。私のすべてを見透す憧憬の対象を驚かせたい向上心、彼女の努力もいつか必ず報われる。

第十二回「わたしのユーフォニアム」
→特別の病におかされた少女が死ぬほど悔しいを知り、同じスタートラインに立つ本当の始まり。また大好きな気持ちに怖気づき、私から「私たちのユーフォニアム」になる。フィルムを回しているのに、最高に美しい瞬間しかない。

最終回「さよならコンクール」
→いままでずっと頑張ってきたことを知っているから、ありのままのドキュメンタリータッチでその勇姿を描き出す。舞台袖や舞台裏を時折覗かせてくる臨場感、作劇だからこそ煌めく青春をぜんぶ、等価値に。そして彼女たちの曲は続くのです。

番外編「かけだすモナカ」
→選ばれし者にしか興味がなく特別な存在しか見ない、それが本来の僕の作品鑑賞だった。しかし、この悔しさを成長の糧とする少女の物語は、どうしようもなく僕を惹きつける。新宿と立川のオールナイト終後の朝焼け、その余韻のこともずっと覚えてる。

鑑賞記録
2023.07.29
NETFLIX
→青春18きっぷで京都まで揺られるお供に。
クドゥー

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