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どうする家康のタキのレビュー・感想・評価

どうする家康(2023年製作のドラマ)
4.2
家康といえばドラマでは参謀であった本多正信と共にいるシーンが思い出されるが、家康と徳川家臣団の繋がりをメインに描くドラマは切り口としては見たことがなく家康にまつわる定説もそのまま描かず新解釈もたくさんあって1年間楽しく視聴できた。井伊直政の登場シーンはブッ飛んでた。こういう思い切りの良いフィクションをこの時代の大河で持ってくるのは批判を恐れぬ勢いがあってワタシは大好き。服部半蔵の忍び仲間とのシーンも楽しかった。鎌倉殿では稀代の悪女といわれた北条政子を家族想い弟想いの女性として描き、どうする家康ではこれまた悪女と言われた築山殿を連合国構想をもつ平和主義の女性として描いた。悪女のレッテルは現代においてもはや信用するに足りないが、最終回で天海和尚が家康を良く見せるためにいい話は盛って悪い話は削除したり捏造したりするような様子もみられ、結果的に妻と長男を殺させた家康をどうすればよくみせられるかと考えた時に当時は築山殿と信康を悪者にするしかなかったんだろうなと想像したりした。
茶々の人物造形も新解釈。時の権力者ではあるが父母の仇となる男の側室になる理由は大事なポイントだ。シンプルに「生きるため」というのもそうだろうが母が慕っていた家康がいつしか自分の「推し」になり、母の危機に駆けつけて来ぬという解釈違いが起こった時にブチギレてアンチになるというのはなかなか面白い。家康の天下取りクエストのラスボスは秀頼ではなく茶々だったのだ。炎の中で自害した茶々の後ろに魔王信長の幻がみえるようだった。北川景子の一人二役で外側はお市の方にそっくりだが中身が伯父信長にソックリというのもよく表現されていた。家康に鉄砲の銃口を向け「ダァン!」の登場シーンは鮮烈だった。そして一向に後継ぎの生まれない秀吉が茶々との間にだけ子が生まれる謎。秀吉の子でない可能性が高いのではないかと思うが、秀頼は誰の子だとお思いかのあとに続く、茶々の発した「私の子じゃ」というたった一言のインパクト。織田信長の血統というのがなにより大事であって、秀吉自身もそうであるなら自分の血筋を持つ子でなくてもよいと思ったのではないかという含みがある。上手いなぁ。父親は誰かなどと下世話な話になるのかと一瞬でも思ったワタシを殴りたい。
江戸時代は約260年もの長きに渡る戦争のない世の中だった(令和5年ではまだ戦後78年でしかない)今年の大河は平安時代に移るが「平安時代は本当に平安なのか」という BSの番組を見た。政治がらみの外交はせず、民間レベルの貿易はしていたらしい。このあたり江戸期の鎖国中の日本に似ている。そして呪詛が蔓延し陰陽師も激増していたらしい。人は殺さないが現代のSNSを思わせるやり口ではないか。江戸時代どころじゃない現代との共通点を見出して、今年の大河に期待がふくらんでいる。
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