daiyuuki

流行感冒のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

流行感冒(2021年製作のドラマ)
4.7
小説家の私(本木雅弘)は、妻の春子(安藤サクラ)と4歳の娘・左枝子(志水心音)、2人の女中・石(古川琴音)きみ(松田るか)とともに都心を離れた静かな村で暮らしている。最初の子を生後すぐに亡くしたせいで、娘の健康に対して臆病なほど神経質である。
時は、大正7年(1918年)秋。流行感冒(スペイン風邪)が流行り、感染者が増え始める中、女中の石が、よりにもよって村人が大勢集まる旅役者の巡業公演を観に行ったのではないか、という疑惑が浮上する。私は石を問い詰めるが、石は行っていないと否定。疑念を拭えない私は石に厳しく当たり、左枝子に近づかないよう言いつけるが…。
志賀直哉の同名小説をドラマ化。
長女を流行り病で亡くした悲しみから、いわゆるスペイン風邪の流行に怯えて、大勢の人が「密」になる運動会や芝居一座の公演を止めるように村長に掛け合ったり、白湯がいいなど対処法を聞けば確かめもせずに飛びつき、尽くしてくれる女中の石を疑って責めてしまう「私」は、傍目には滑稽に見えるが、コロナ禍でコロナの原因になると疑われる映画館やコンサートや飲食業に対しての過剰な規制やバッシングそしてコロナ患者や医療従事者に対してのバッシングや差別を目の当たりにした私たちには、大正時代のスペイン風邪の流行から何の教訓も得ていない令和のコロナ禍の有り様に怒りと恐怖を感じる展開だった。
石を許せなかった「私」が、家族の危機を石と一緒に乗り越えた姿は、大きな危機を乗り越えるために必要な絆などを教えてくれるヒューマンサスペンスドラマ。
「人間ってそう簡単には負けないんです。繋ぎ止めるものがたくさんあるから」
daiyuuki

daiyuuki