真田ピロシキ

ゴーイング マイ ホームの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

ゴーイング マイ ホーム(2012年製作のドラマ)
4.0
是枝裕和監督による初の連続ドラマ。阿部寛演じる主人公の名前が『歩いても歩いても』や『海よりもまだ深く』と同じ良多でその姉を『歩いても歩いても』同様にYOUが演じているように是枝映画との共通点を強く感じるものとなっている。

多くの是枝作品と同じように家族がテーマの一つであるけれど、どちらかと言うと映画では括弧のついた"家族"が描かれているのに対して本作では子供を注意できなかったり父に浮気癖があったりはするものの不穏なもののない家族が描かれている。是枝映画をよく見てれば拍子抜けかもしれないが、そこはTV向けなんだと思う。仕事や家事で疲れた夜中の家で『万引き家族』みたいな毒のある家族ドラマ見たい人は少ないだろうし。

それじゃあ物足りないのかと言うとこれがとても良いんです。クーナという小人探しが物語のポイントになるのだけれど、是枝なので非現実的なファンタジック展開など起きるわけがない。各家族に大きなイベントや大きな感情のぶつかり合いもなく(唯一の死別を除いて)平凡な日常が流れていく。それなのに阿部寛と山口智子と娘役の蒔田彩珠がただ帰っているだけのシーンが、西田敏行と宮崎あおいの親子が早死にした母を長回しで偲んでるシーンが思わず目を潤ませる。この何気ない所で心動かさせる点が是枝監督を名監督たらしめる手腕と思いましたね。センセーショナルを必要としない。

クーナの存在に関しては分かり易すぎるくらい説明されてて目に見えないものの大切さを表す。夏八木勲演じる良多の父 栄輔がそっくり台詞で言ってる上に槇原敬之の主題歌にも歌われている。TVの分かりやすさを否定する是枝監督にしては随分譲歩したと思うのだが視聴率は振るわなかった模様。やはり派手さがないとウケが悪いのかもしれない。でも良いドラマですよ。役者は皆いい演技してますし、当時16年ぶりの連続ドラマ出演だったという山口智子は昔のイメージを残しつつ年月を重ねた魅力がありました。そして何と言っても子役の蒔田彩珠が上手くて、この後是枝作品の常連になってるんですよね。役者の細かい演技を存分に楽しめるドラマです。