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春情の乱のmidoredのレビュー・感想・評価

春情の乱(2022年製作のドラマ)
5.0
女装した男の子がお嫁入りする韓国のラブコメ時代劇です。身分差、女装、陰謀、男だらけの三角関係。気軽に楽しめるマンガのような設定ですが、伏線をしっかり回収しつつ、最後まで二転三転して飽きさせないストーリー構成でした。

しかも、基本的に良い人しかいない世界です。必要最低限の悪役をのぞけば、底意地の悪い人間も、足を引っ張るアホもいない一方で、シスターフッドは熱く、嫁姑の関係性までもが理想的なので、全編ストレスフリーで視聴できます。

主演の俳優さん達もなかなか好印象。

健康的な男の子といった雰囲気の俳優さんが、どこからどう見ても女装した少年のままに元気いっぱい「お嫁さん」しているのが実に可愛らしい。なぜかバレないのもご愛嬌です。

その「旦那様」はうってかわった韓国アイドル風のハンサムで『菊花の契』のような清貧の文人貴族。しかも、常に優しく正しく純情で、戦う際にはヒーローという絵に描いたような王子様なのが浮世離れして良いのです。

そんな2人が並んでいると、身長差があまりないこともあり、新婚夫婦にも、学芸会にも、友達のようにも見えて初々しい。

また、恋女房の前では借りてきた猫のくせに、弟弟子には偉そうに反りかえり、急速に打ち解けてしまう「旦那様」のギャップも面白かった。どちらも実は同一人物だからか、それぞれに強めの愛情が発揮されるのですけれど、出し方が真逆なんですね。性差や年功序列が強い社会ならではの味だと思います。

それでこれは結局BLだったんでしょうか?ブロマンス?結婚式まであげている割に、恋愛であればあまりにじれったく、友情であれば熱すぎます。クソデカ感情というアレです。例えるならば『兵隊やくざ』の名コンビくらいの距離感なのです。それが逆に熱いといえば熱い。タイトルの印象とは異なり、男女愛の焼き直しみたいなBLドラマとは一線を画しております。

余白のある良いラストに、かりそめの初恋は本物の友愛に変わったのか、はたまた本編が終わってからが2人の本当の始まりなのかと想像がふくらみました。赤ちゃんのフェイントにはちょい笑いました。

あまり期待せず視聴しましたがなかなかの良作でした。
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