なっこ

シネコンへ行こう!のなっこのレビュー・感想・評価

シネコンへ行こう!(2022年製作のドラマ)
2.8
数ある娯楽の中でなぜ映画が特別なのか。それはやはり個人的な思い出と深く結びついているからだと思う。

記憶に残る最初の映画、家族で出かけた映画、初めて自分で選んで見た映画、どれも全て特別なものばかり。

シネコンには特にお世話になった。郊外のシネコンへはお得なレイトショーに行くから帰り道は暗い。その暗さ、映画館の延長で眠気と見た映画の余韻に浸ったままなんとも言えないぼぉっとした時間を過ごす車内。映画は、映画館で。そうこだわるのは、幼い頃から映画館で映画を体験して純粋に楽しかったからだと思う。映画は見るものである前に行くものだった、私にとっては。それがパンデミックの影響で変わってしまったけれども。

このドラマではやってみたいアルバイトのひとつだったシネコンスタッフの疑似体験ができて楽しかった。閉鎖危機にあるシネコンだけにのんびりしててスタッフルームで色んな映画あるあるのおしゃべりを聞いてるのが好きだった。そう、単館でもシネコンでも、映画を見に行くこと、映画を好きでいることには変わりない。映画を見るという行為の形態が変わりつつあるいま、私が幼い頃に行った数々の映画館はもうそこにない。あそこに映画館があったんだよ、意味もなくふいに誰かにそう話し始める日も近いだろう。その時伝わるだろうか、何かに熱狂するような気配を活気を持った建物が確かにそこにあったこと。

映画という単語が表す言葉の景色も変わっていくのだろう。スマホで楽しめるコンテンツのひとつに過ぎないものになっていくのかもしれない。目新しくて新しい文化だったシネコンも過去のものになりつつある。単館経営を続けていくのは厳しい世の中、私も映画に行くならシネコン頼りな現実。ドラマ同様頑張ってほしい。古い映画の上映会も続けて欲しいな。映画は文化。その灯りを消さないように。
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