なっこ

テンペストのなっこのレビュー・感想・評価

テンペスト(2011年製作のドラマ)
3.1
初めて首里城を訪れたとき、メインよりも外れた位置にあった龍に何故か心惹かれて写真を撮った。後から一緒に訪れた友人が私が撮っていたあの龍頭が首里城に設置されている彫刻物のなかで唯一当時のものだったらしいよ、と教えてくれた。それは「龍樋」と呼ばれている。それ以外の立派な建物はほとんど復元されたものなのだと知った。

その首里城が火災にあってしまった。

このドラマはところどころにかつての首里城が映り込んでいる、首里城に会えるドラマとして再放送された。琉球王国とはどんな国だったのだろうと興味を持ち始めたところだったので今回見ることができて本当に良かった。しかも3回に分けて始まる前に主演の仲間由紀恵さんと谷原章介さんがそれぞれ撮影の思い出などもコメントしてくれててなんだか得した気分になった。

台湾を旅行しようと地図を見たら日本からするとほとんど沖縄と位置が変わらないことに気がついて、行ってみるとお墓のあり方とか文化的にも近い部分があるように思えて沖縄県というよりもその前の琉球王国がどんな国だったのかを知りたくなった。さらに中国の冊封体制で苦しむ韓国の時代劇ドラマを見ていると日本はどうだったんだろうと気になっていた。陸続きの朝鮮と海に隔てられた台湾や琉球、大和はまた違う関係性だったんではないかなと古代東アジアの歴史も気になるし、そこへ欧米やロシアが侵略してくる近代になってからの他国の脅威はかつての中国相手とはまた違ったものだろうと考えるようにもなった。

このドラマは連続10回にぎゅっと凝縮されててとても展開がはやくて見応えがあった。前半の女人でありながら宦官と偽って宮廷にあがる孫寧温と後半の流刑地から今度は側室候補として女人の真鶴として宮廷に戻ってくるヒロインがどちらの姿でも活躍する様が面白い。彼女は生まれたときから龍付きなので絶体絶命のピンチも必ず脱することが出来るはずという安心感がある。その辺がファンタジー。

見どころは男装の麗人として完璧な美しさの仲間由紀恵さん。彼女の美しさにはため息が出てしまう。後半の側室の衣装、沖縄の着物、紅型の衣装も美しく華やかで似合っていた。琉球舞踊も見事だった。彼女を恋慕う周りの男性陣も豪華。漢籍で回答を書くことができ、幼い頃に英語もフランス語もマスターし、英国女王よりサーの身分も賜ったヒロイン。美しさだけでなく知性も兼ね備えた彼女は無敵、でも何より彼女の生き方が自身の信念を貫くものであったところがこの物語の本当に美しいところだと思う。目的は出世でもなく、秘めた恋の成就でもなく、一国の王の寵愛を得ることでもない。最後まで貫かれる彼女の生きようにこそ励まされる。

人は死んでも国土は残る

龍付きの子として生まれることは国土に望まれて生まれることなのかもしれない。
この物語では敵味方が些細なすれ違いで入れ替わる。でも最後には1番の敵に思われた人が1番報われたように思えて、世間で揉まれて本物になっていく者もいれば、下から這い上がっていく者もいることを表しているように思えた。誰もが自分の国の王になる世の中へ。国土と相思相愛のまま子孫へとつなぐこと、そんな大きな時間の流れが彼女には見えていたのだろう。今の時代を彼女ならどんな言葉で飾るのだろうか。
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