みや

猟奇的な彼女のみやのネタバレレビュー・内容・結末

猟奇的な彼女(2008年製作のドラマ)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【運命は自分で切り拓くもの】

怒るとしょっちゅう股間を蹴飛して、「ぶっ殺す」と吐き捨てる猟奇的な彼女・髙見凛子(田中麗奈)。

サメのように凶暴な性格の彼女だが、一生に一度の運命の相手に突然姿を消され、傷心していたところを眞崎三朗(草彅剛)に助けられる。

運命の相手の喪失から立ち直り、お互いが運命の相手になっていく軌跡を描いたラブストーリー。

韓国映画『猟奇的な彼女』のリメイクだが、映画の世界観はそのままで、オリジナルストーリーが展開される。

本作の魅力は坂元裕二が著書で明かす通り、「真面目なシーンかと思ったら、いつの間にかふざけたシーンに変わっていたり、ふざけているシーンだと思ったら真面目なシーンになっていたり」するところであり、「笑っていいのか泣いていいのかわかんない」脚本に仕上がっている点である。

コメディタッチの展開が気づけばシリアスなシーンになっていて、その逆も然りで、感情の振れ幅が非常に大きいテレビドラマである。

三朗
「凛子の“凛”は凛々しいの“凛”です。絶対書けるようになってください。うっかり間違えると、たぶんぶっ殺されます。あと、小説を書いてる時は絶対に話しかけちゃダメです。躊躇なく物が飛んできます。お酒はほんとはそんなに飲めないんですが、たまに飲むと大変になる時もあるので気をつけてください。彼女のことは絶対お前って呼んじゃいけません。うっかり呼ぶと急所を蹴られます。全然遠慮がないから、これがまた痛くて痛くて。夜中に呼び出されても、どんなに遠くてもすぐ行ってあげてください。時々ふらっと旅行に行ってしまう時があります。そんな時は……。エスカレーターに乗るのが下手です。結構よく転ぶし、……。絆創膏を持ち歩いてください。これは自分が殴られた時も使えるんですけど、……。ああ見えて実はすごくお人好しだから、一緒に街を歩いているとティッシュ何個も貰っちゃって、映画の時間に遅れることもあります。彼女が薔薇を100本買ってこいと言った時は200本買って行ってあげてください。あ、そうだ。彼女が一番好きな曲はパッヘルベルのカノンです。練習して弾けるようになってあげてください。着メロなんかもカノンにするときっと喜ぶと思います」

三朗の口から発せられる凛子との思い出の描写や彼女自身の人柄は繊細に語られており、ここからも坂元裕二の人物設定の綿密さや人物洞察力の鋭さが伺える。

また、以前の作品に見受けられた留守番電話に残されたメッセージでのすれ違いや、口には出さない心の奥に閉まった想いを伝える手段としての手紙(ラブレター)が本作においても用いられていた。

加えて、以降の作品に繰り返し登場する屋台のたこ焼きといった描写も見受けられた。

2000年代前半から2010年代以降の作風へと移り変わる転換期であり、両方の要素が垣間見える作品だと位置づけることができるだろう。
みや

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