トランティニャン

マスター・オブ・ゼロ シーズン3のトランティニャンのレビュー・感想・評価

3.5
5話しかないのに、これまでと違って一気に観られず。
アジズ・アンサリが監督ゆえデフがほとんど出てこず、デニースとパートナーのアリシアの物語である上に、スタンダードサイズ・固定撮影・長回しという演出上の大転換がなされていて、評価は分かるけどシーズン2が好き過ぎた自分としてはアジャストできず。

シーズン2までは、インド系移民2世というマイノリティとしてのデフの生活をユーモアと皮肉を交え描きつつ、都市で暮らす独身アラサー男の恋愛や交流を至極リアルに描いていた。
シーズン3は基本郊外に舞台を移し、30代後半に差し掛かったレズビアンのカップルが主人公に様変わりしたが、空間やセリフによる共感の話法は変わらない。

登場人物のライフステージの変化は、そのまま色々あったアジズ・アンサリの変化であるし、コロナで都市生活を描けなくなったこともあるだろう。シーズン1の1話では「子供が産まれたらかわいいだろうけど大変過ぎてつらみ」な感じだったのが、「覚悟を決めたんだ」というセリフに至るわけで。ちらっと出るデフは自分の世界から一歩踏み出せず、しかも停滞すらしてるのがつらい。
話によって1時間だったり30分だったりするのは配信ドラマらしい話法だが、出色なのは不妊治療の苦しみと喜びを1時間で詳細に描き切った4話。固定カメラによる密着性、そして不在の演出が完全にはまっていた。とにかくあんなに「ビッチ」がポジティブに響いたことはない。ハードでタフな状況に立ち向かうためには「ビッチ」が必要だったんだと。