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晩媚と影~紅きロマンス~のSのレビュー・感想・評価

晩媚と影~紅きロマンス~(2018年製作のドラマ)
4.9
中国作品は苦手。史劇も苦手。題名とジャケに惹かれつつも完走は無理だと諦めていたためずっと観ていなかった作品。しかし、気づいたときには晩影の魅力に引き込まれていました。
主題歌が流れた瞬間、中国作品に対しての苦手意識が揺らぎ、物語が始まると、その世界に落ちていく自分に驚きました。
中国語の音に抵抗があったにも関わらず、晩媚や長安が語る言葉は心地よく、今まで気づかなかった中国語の美しさを知りました。
物語は残酷で美しく、その中で紡がれる晩媚と長安のプラトニックな関係はこの世界観をさらに強く強固なものに仕立て上げていました。私はここまで純粋で洗練された愛を描いた作品をみたことがありません。とても綺麗な作品でした。


✴︎以下ネタバレ





「涼州安定」によって長安が生きていることを示唆するような描写と長安を失い絶望の中で生きる晩媚の姿の明暗が残酷でした。もしも長安が生きているのなら最後に晩媚へ希望の光をさしてあげてほしかった。
バドエンやメリバ作品は好きですが、落とすなら落とす、救うなら救うをしっかりと描いてほしいため、本作のように視聴者だけに希望を持たせるのは単純に好みではありませんでした。
晩媚に長安の死を突きつけるのであれば、長安が命を懸けて晩媚を守ったという美を長安の死を持って描いてほしかったという願望。
長安にも晩媚にも使命があり、そのために二人の運命が交錯することはない。民のために戦うという使命を背負う長安の軍は今や李嗣源が率いているけれどもここは二人が手を取り合ったのだろう。そして、城主として仲間を守るという使命を背負う晩媚に長安は自らの死を突きつけて去ったのだろうか。もしくは、刑風の城主を殺された恨みと城主とともに死にたいという願いのために晩媚は長安の死を伝えられたのか。最後に渡された団扇は刑風の心ばかりの優しさであり、長安との再会は全て晩媚に委ねられているのだろうか。しかし、どちらにせよ晩媚に希望を与えないラストはもう巡り会うことのない二人の暗示なのだと考えてしまう。それでも晩媚は暗闇の中から希望を見つけて生きていく人物である。だからこそ、より切なく悲しく苦しい。幸せになってほしいと願うのは反するのか。それでも命を懸けて愛し愛される関係はとても素敵でした。
最後に二人の笑顔がみたかった。
物語の幕引きが好みではなかったため✩︎4.9です。原作ではこのあと晩媚が長安に会いに行くそうですが本作ではそれがみられない。もしかしたら、本作は私の感じたようにもう二度と出会うことはないのかもしれない。それはそれでまた監督さんの美なのかもしれない。
今まで観てきたどのドラマよりもファーストタッチからの引き込まれ方、話の構成、世界観、言葉選び、カメラワーク、音楽、色彩、、全てがとても好きでした。

わたしはあなたを裏切らない

とても好きな台詞です。これ以上の告白を私は知りません。

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