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おかえりモネのマイロードのレビュー・感想・評価

おかえりモネ(2021年製作のドラマ)
5.0
【時々忘れて、笑ってね】

メインの舞台は宮城県気仙沼。
名前のある登場人物全ての人の心にそれぞれ違う大きな杭が一つ刺さっていて、テーマとぶれずにそれが半年通して徐々に明らかになっていく過程が見事。どれもこれも重くて、ずっと涙が止まらなかった。「暗い」と言われるのも無理はない。でも今まで見てきた朝ドラの中で最高に好きだった。

主人公の百音の杭は、「3.11の時に何もできなかった、そしてその場にいなかったこと」
二度とそうなるまいと、自責の念を感じ続ける地元を出て「誰かの役に立つ仕事」を模索する。


『非常事態に音楽は役に立たないのか』
『復興とは、何もかもを元に戻ったようにすることなのか』
『傷ついた人間は本当に強くなれるのか』
『地元のために働くのが美徳なのか』など
挙げればきりがない裏テーマは、どれも昨今、問題提起まではされていないが少なくない人が腑に落ちないと感じていたことで、それを全くご都合主義に頼らず真正面から切り込んだ脚本には圧倒されっぱなし。

キャストも本当に全てが最高で。
1話目こそ、他作の刑事役ばっかで「物騒な事件が起こらないのが不思議」とすら思っていたが、キャスティング神だった。
浅野忠信さんには震えたし、藤竜也さんはもうテレビの前の人みんなのじいちゃんになってほしい。あの不思議な包容力なに…ずっと元気でいて…。

連続テレビ小説特有の、説明しすぎる語りも今作は封印。芝居で伝えるのが心地よかったな。

「それは誰かの為になりますか」「私に何ができるんだろう」と考え続けた主人公が、行き着いた答えのようなものを聞いた時は、自分もスッと胸が軽くなって氷が溶けたような感覚がありました。
充実した半年間をありがとうございました。
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