トランティニャン

ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルーのトランティニャンのレビュー・感想・評価

4.5
デレクの作品は今後ドラマで観たいと思える、あらゆる表情・感情が溢れ出す傑作だった。

双子の弟ドミニクには精神を病める兄トーマスのショッキングな行為から一貫して、自分の力ではどうしようもない悲劇が相次ぐ。彼に親身に助言してくれる人にも耳を貸さず状況は悪化し、自暴自棄になっていく。底知れぬ疲労感から一寸眠りにつけば、甘美で苛烈な過去が彼を襲う。3話4話あたりは辛すぎる。


家族への愛憎は年月で移りゆく。大切な人ほどそうだ。継父への憎しみはいつしか感謝に、弟を疎ましく思う気持ちはいつしか自分の存在証明になる。母への思いは祖父の自伝で一寸うやむやになる。家族と、その血と愛の歴史を徹底して描いてきたデレクの真骨頂ともいえる作品だ。

双子を演じ分けたマーク・ラファロのエミー賞受賞も納得。弟ドミニクを減量して撮り、増量して6週間後に兄トーマスを撮ったそうだ。デレクはその間に過去パートを撮影したとのこと。