ごー

J005311のごーのレビュー・感想・評価

J005311(2022年製作の映画)
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元々観ようか迷っていた映画で、たまたま映画と映画の間の時間潰しに丁度良かったので鑑賞。だったけれど結果凄く良かった。

まず、鑑賞中に感じたこと。
カメラが被写体に近く全体が把握しにくい。その分緊張感が伝わってくる。
タクシーに乗車拒否される行き先ってどこだ?
車で2時間程度の移動に100万円もかける理由は?神崎の目的は?電話の相手に何か渡すのか?お金はある程度あるようなので借金取りとかではなさそう。
上野なんかの人混みであんな目立つ格好で引ったくりをする奴がいるか?ただまあ引きの映像で引ったくりに目を向けさせるために目立つ色(赤)にする必要があったのだろう。
上野で車を借りたはずなのに横浜ナンバー?
行き先が聞き取れなかった。東?って聞こえたけど走ってる途中で雪が見えてきて、2時間くらいと言っていたので北関東かと思った。
神崎が証明写真機の中に携帯を置いてきてしまってるけど?
場所を特定するための情報、スーパーオギノ、富士山、富岳風穴。
喫茶店のシーンで、砂糖をコーヒーではなくトーストにまぶしているのが可笑しかった。
雪道でカメラマンの足音が入っちゃってる。行きは山本のものだと解釈もできるけど帰りは神崎一人のはず。編集で消せないものなのか?そこまで気が回らなかったか?

鑑賞直後の感想
神崎の目的が分からないまま、謎が謎のまま終わった。こんな映画あるのか。すごい。

場所特定
スーバーオギノは山梨県に展開しているスーバー。
富岳風穴は青木ヶ原樹海に隣接している場所。

場所特定後の考察
神崎は青木ヶ原の樹海に自死するために向かった。理由はおそらく何かで困っていて電話の内容はその件。タクシーで乗車拒否されたのは行き先が樹海だったから。お金や携帯に執着がなかったのもどうせ死んでしまうから。
神崎は山本の行動により死ぬことをやめる。駐車場に戻ってすぐにパトロールカー(パトカーではない)が来て近くに止まっているので無事保護されたと思われる。

パンフレットを読んで分かったこと
神崎が死のうとしていたのは間違いなかった。
山本の赤いジャンパーが引ったくりにしては目立ち過ぎる、という懸念はあった。ただ赤信号の赤、危険信号を発する山本という意味でピッタリだったのでそれにした。
雪道でスタッフの足音が入ってしまっているのはわざと残した。生きることは歩くこと。生きる象徴として聞こえたから、消したくなかった。映画的にどうなのかと言われようが、それが大事だと思った。

最終的な感想
セリフや説明がほとんどなく、カメラワークも独特で稀有な作品。
ぴあフィルムフェスティバルで満場一致でのグランプリというのも納得。
二人の未来が開けると良いと思った。

日曜に東出昌大さんも含めたトークショーの回があるのでそれも行くことにした。
聞き取れなかった行き先は富士?だったのか?次は注意して聞こうと思う。

2度目の鑑賞、監督、主役の二人と東出昌大さんトークの回鑑賞

タクシーに乗車拒否されるシーンで神崎が運転手に両手で丸を描くジェスチャーをしており、あれがなんだったのか気になった。
1回目に聞き取れなかった行き先は「やまなし」だった。
例の神崎がトーストに砂糖をかけるシーンで山本が食べていたナポリタンがやたらと大盛りに見えた。
パンフレットに撮影許可やアポは殆どとってなかったと書かれており、最後のシーンに出てきたパトロールカーが気になっていたのでサインを頂く時に聞いてみたら、あれは偶然に来たもので、撮影中河野監督は気づかなかったとのこと。ただあれは神崎の行動と関連していて結果的にとても良かったと思う。タイミングもバッチリだった。
神崎役の野村さんが書かれている脚本も現在作品化が進められているとのことだったので期待したい。

トークの内容
東出:画がもっている、なぜこのように耳目を集めてられるのか?
河野:ノンフィクションのようにしたかった。芝居に嘘をつきたくなかった。その結果だと思う。
野村:自分の素を出さないといけないとは思っていない。スクリーンに登場するのは他者。神崎の日記を書いたりして役作りをした。

東出:何度もリハーサルをしたとのことだがなぜか?
河野:下手なので。撮影期間が限られているため、現場でバタバタしないよう。
東出:下手ではない。生きてる人間に見えたらそれに越したことはない。

東出:トーストに砂糖をかけるのかわいくていい。なぜかと思った。
野村:説明がないのがいい映画というのかと漠然と思った。河野監督も説明がない良さがあると言っていた。

東出:かっこいいとか綺麗とかでなくても画がもつ先輩などがいるが、なぜかと考えた。その人の経験や研鑽によって奥行きが出てきてそれが良いのだと思った。
数字も大事だが、良いものを作ったという時間も大事。
自分が経験していないことを演じることもあるので、どうしても○○風になってしまうことがある。「空白」の吉田監督に「役者って偽物ばっかじゃん」と言われたことがある。

東出:ゲリラ的に撮影したとのことだが、タクシーの乗車拒否はどのように撮ったのか。
河野:100%断られる言葉を言って、と伝えてあった。

トーク後の感想
自然な演技や作品が好きなので、監督もそれを目指していたと聞けて良かった。俳優のルックスに関してもそうで、美男美女ばかりが出ている作品は不自然で好きになれない。現実の世の中はそんなんではないから。ルックスに頼らない実力を持った俳優が増え、評価されると良いと思っている。
説明的なセリフも不自然さに繋がるので、意図的に説明を排したというのも良かったと思う。
野村さんは素の自分じゃなくて良いと思っているとのことだったが、本人も神崎に似て朴訥とした雰囲気があり、好感が持てた。
乗車拒否やトーストの砂糖など、気になった点が東出さんといくつか被ったのがちょっと嬉しかった。
ナポリタンが食べたくなった。
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