ヨーク

オールドマンのヨークのレビュー・感想・評価

オールドマン(2022年製作の映画)
3.3
新宿のシネマカリテでやっている夏の映画祭、カリコレの一本目です。
カリコレってのは未体験ゾーンの映画たちとかシッチェス映画祭みたいにあんまり一般公開されないようなマニアックな作品を観られるイベントなので大変ありがたいのですが、今回の一本目はこの『オールド・マン』でした。まぁ大手のシネコンはおろかミニシアターでも中々一般公開されないような作品を取り扱っているので基本的には安くてしょぼい、いわゆるB級やC級な映画がメインになるのだが『オールド・マン』もまぁ大体そんな感じの映画でありましたな。ちなみに主演はあの『ドント・ブリーズ』のスティーブン・ラングなのでそこに関しては一級である。だがそれをもってしてもイマイチだな…となってしまうのでまぁそういう感じの映画ですよ。
あらすじも如何にも低予算な感じでスティーブン・ラング演じるジジイは山小屋で一人暮らしをしているのだが、ある日その山小屋を訪ねて一人の若い男がやってくる。なんでも山登りしてる間に道に迷ったらこの山小屋の煙が見えたとかなんとか。そんでひとまず家に入れてあげたのだが、どうもジジイと若者どちらの言動も不審で何かしら怪しい展開になっていき…という感じの映画ですね。
ややネタバレになるかもしれないがある程度数を観ている人なら映画が始まって20分もすれば(あ、これ山小屋から一歩も出ないな…)と直感するような感じで、密室の会話劇一本でいくぞ! っていう感じがアリアリな映画なんですよ。要はサイコサスペンス的な感じなのかな。ダニエル・キイスのビリー・ミリガン・シリーズのヒットとか『羊たちの沈黙』の影響で80年代末から90年代にそういう人間の心理の奥の闇を描いたような作品がやたら流行ったような気がするが、まぁ本作もそんな感じの映画でしたね。ひたすら密室での会話劇からその会話内容に矛盾とかが見えてきて、あれ? なんかおかしいぞ…? という感じになるのだが、ぶっちゃけそのネタも映画が始まってすぐに分かってしまう。上で20分も観ればこれは山小屋から出そうにないなと気付いたと書いたが、そうなると展開のパターンというのは大体読めてしまうし実際その読みの通りの映画で特に驚きもない感じでしたね。そこはさすがにもう一捻り必要だろ…! と思ってしまいましたね。
まぁでもその辺は低予算の映画だからとかそれ以上にコロナ禍の事情でミニマムなセット内での撮影しかできなかったとかそういうこともあるのかもしれないが。ただ全てがつまんない映画かというとさすがにそんなことはなくて、メイン二人の役者の掛け合いや演技合戦的なものはそれなりに面白く観られた。まぁそれだけで100分近い尺が持つのかというとそうではないのだが…。
あとはあれですね、これは映画そのものが面白いというわけではないんだけど、俺が観た回では偶然にも映写トラブルがあったんですよ。俺は今まで3回くらいは映写トラブルに遭ったことがあるけどそれは全部本編前の予告編で画面が止まったとか映画が始まって数分でスクリーンが真っ黒になってまた始めからとか、それくらいのものだったんですよ。でも今回は映画のクライマックスで急に画面が止まったかと思ったら一気に10分ほど巻き戻ってまたさっき観たシーンが繰り返されたんですよね。これがねぇ、映画のネタと併せてみると実に味があって面白かった。詳しいことはネタバレになるから言えない(ほぼ言ってるようなもんだが!)ので黙っておくが、すわそういう演出か!? と思ってしまうアクシデントであれは映画鑑賞の体験としてはちょっとした奇跡だったなと思いましたね。
まぁそれを加味しても本作のスコアは3.3となっていて、俺の中ではやや低めだなという程度ではあるのだが。まぁそんな面白い映画ではなかったけど、アクシデントも含めてやっぱ映画館で観る映画はいいなぁ、と思いましたね。そこ込みなら面白かったな。いい経験した。
ヨーク

ヨーク