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沈黙の自叙伝/自叙伝のギルドのレビュー・感想・評価

沈黙の自叙伝/自叙伝(2022年製作の映画)
3.6
【血縁を乗り越える家父長制の磁場】【東京フィルメックス】
■あらすじ
青年Rakibは地元の首長選挙に立候補を表明した家主の選挙キャンペーンを手伝うことになるが…。父親的存在からの承認を求める一人の青年を通じ、暴力と欺瞞に満ちたインドネシアの近過去を寓話的に描く。ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映され、国際映画批評家連盟賞を受賞した。

■みどころ
父親的な存在へ承認されたい青年のお話。
将軍の下で一緒に過ごす青年はチェスにしても車にしても狙撃にしても将軍の管理下に置かれて過ごしている。
その中で青年Rakibはビリビリに引き裂いた将軍ポスターの犯人探しをしたり、頑張って狙撃の練習をしても将軍から認めてもらえなかったり、Rakibの転職にも軍の部下によって止められてしまう。

本作は疑似家族というテーマを扱いながらも家父長制の大きな存在で疎外感・不信感を得る過程を丁寧かつ病み上がるように描いていて、その質感が良かったです!
軍隊の一種の暴力的な象徴、欺瞞というのを将軍とRakibの生活の中で圧縮され、家父長制の深刻さに発展させる巧みさは見どころに感じました。

楳図かずお「ねがい」の様な展開で割り切れない想いを打破しようとする悲しさが特徴的な映画だが、本作を紐解くと家父長制に抗う青年の置かれた環境で家父長の磁場を纏うのが面白い、そんな作品です。
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