ヨーク

コカイン・ベアのヨークのレビュー・感想・評価

コカイン・ベア(2023年製作の映画)
3.7
もうね『コカイン・ベア』とかいうタイトルの時点で何をかいわんやというか、大体どんな映画か分かれよな! って感じの本作ですが、大体そういう映画でした。そういう映画だよ、分かるだろ。分かる人は帰ってよし! 分からない人はちょっとこの感想文読んでいこうか。
とはいえ別にそんなに書くこともないんだよな。あらすじも、何かギャングがコカインを空輸してたら事故ってコカインごと飛行機がジョージア州の山に墜落。そこで散乱したコカインを現地のクマさんが食べちゃってハイになったクマさんが暴れまくるというそれだけのお話ですね。一応、ガキ二人が親に内緒で幻の滝を探す冒険に出るという『グーニーズ』的な冒険が冒頭に提示されるのだが、その幻の滝がどうしたこうしたというのは特に展開されないままクマさんに襲われて冒険もの的な感じは特にないままアニマル・パニック・ホラーに突入する。ちなみにそのガキの片割れは母親と喧嘩したまま飛び出してそのガキを追って山に入る母親が主人公的なポジションなんだけど、その親子間のすれ違いから始まる喧嘩の経緯とかも別に盛り上がったりはしない。さらに言うとコカイン輸送に失敗したギャングの尻拭いのために仲間のギャングもコカインを探して山にやってきて、そこでもギャングたちの人間関係のドラマとかが軽く触れられるのだが、本当に軽く触れられるだけでそれならもう無くてもいいよ! という程度のドラマでしかなかった。
ま、そういう映画なのでコカインがキマッたクマさんが如何に暴れまわるのかというその一点だけを楽しむような作品なのだが、そこはもう最☆高に面白かったですね。思わず最高ではなく最☆高とまで表記してしまうのだからコカイン・クマさんの暴れっぷりはすっごく面白かったのだが、☆マークまで付けてそこまで言う割には3.7というスコアはそんな大したことないじゃないかと思われるかもしれないが、まぁそうなんですよ。そんなもんなんですよ。
実は本作を観る前にTwitterで流れてきた感想で「序盤は良かったけど後半失速した」という竜頭蛇尾的な、尻すぼみ映画だったよという感想をいくつか目にしていたんだけど実際に観てみるとまぁ本当にその通りだったんですよね。大絶賛コカイン美味すぎ祭り開催中のクマさんが第一犠牲者を屠ってからというもの目に留まった人間は全て食い殺すというくらいの勢いで次々とクマさんパンチやクマさんタックルやクマさんbiteが炸裂して人間が何の意味もなく次々と死んでいく様は正に最☆高としか言えないのだが、中盤辺り、そうだなぁ…何分くらいかは分からんが具体的なシーンとしては救急車の辺り以降は一気にテンションが落ちてクマさんが大人しくなってしまう。
そしてそこから入れ替わるようにして人間同士のドラマや駆け引きが描かれるんだが、つまんないんだ、それが。そんなのいいんだよ! こっちはクマさん観に来てんだよ! と言いたくなるが映画はそのまま終盤まで行ってしまう。しかも終盤にもう一回大暴れが来るかと思ったら小暴れくらいのやつしか来なかった。これはガッカリですよ。なのでスコア的にそこそこなのも序盤から中盤は素晴らしかったがそれ以降がダメだった、ということです。
しかし凄い失速だったな。理由としてはいくつかありそうだが、そんなに予算もなかったと思うんだが、その割には分不相応なほどにクマさんのCGがよく出来ていてすげー! と思いながら観ていたんだが、もしかしたらそのクオリティのCGを終盤まで維持できなかったとかそういうことかもしれない。中盤以降クマさんが暴れなくなった真相は知らんが、ありそうな話ではある。もしくはクマさん、序盤でかなりの数の人を殺してちゃんと食べてたからお腹いっぱいになっちゃったのかもしれないですね。お腹いっぱいなら仕方ないよな。野生の動物は一通り食ったらあとは寝ちゃいますからね。後半のクマさんがやる気なかったのも納得だ。
あとはそうだな、俺としてはこの説を推したいのだが、クマさんは作中でも「積極的に人を襲ったりしない」と言われてるように本来はそんな攻撃的な動物ではないんですよね。そこは現実でもそうだが人の味を覚えた熊は恐ろしいが本来は臆病で慎重な性格なわけです。ただ本作はその本来の習性がコカインによって大きく塗り替えられてラリったクマさんが見境なしに人を襲うという映画なわけだ。つまりコカイン、もとい麻薬というものは人だけではなくクマさんまでをも変えてしまう。そして後半のクマさんが前半ほど暴れなかったのはクスリが抜けていつものクマさんに戻ったからではないのだろうか。それはクスリがバキバキにキマってるとことろから徐々に離脱症状というか反動で虚無になってるのだとも取れるし、そうならばおクスリ怖いねという教育的メッセージとも取れよう。何ということか、本作は前半と後半のクマさんのテンションの落差がドラッグの恐ろしさを如実に表しているという啓蒙映画だったのである。
うん、そういうことにしておきましょう。クマさん割と中盤以降もコカイン貪ってなかった? 本当にクスリ抜けてたの? という気もするがまぁいいよ。この映画でそんな真面目に考えても仕方ないだろ。
というわけで序盤から中盤にかけてはぶっちぎりに最☆高な映画でしたがそれ以降はまぁこんなもんだよなという、ある意味ではドラッグ的な熱狂から我に返って醒めた目で観る映画でしたね。とはいえマジで最初の方は面白いから興味ある人は是非。ゴア描写もかなり頑張ってたよ。
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