Masato

非常に残念なオトコのMasatoのレビュー・感想・評価

非常に残念なオトコ(2023年製作の映画)
3.6

いままでは全くと言っていいほど語られてこなかったアジア系アメリカ人が主人公の物語が増えてきていて嬉しい。ハリウッドの金正恩ことランドールパクが監督をしたコメディドラマ。

主人公の日系アメリカ人のベンが自分がクズ野郎だと気付くまでの拗らせオトコの物語。彼の暴走で浮き彫りになってくるアジア系アメリカ人のコンプレックスと苦悩が皮肉めいた形で描かれているので、日本でも好まれそうな拗らせ系とは言えど、わりと高度な映画で難しいかも。でも先進的で素晴らしい。

白人女性と付き合うことで白人と同一化しようとするっていう概念はアジア系アメリカ人にもあることにビックリ。日本人だとわりと白人崇拝してる人が多くて、無意識的に白人と同一化してる人が多い。だから昨今の日本人に多く見受けられるポリコレへの過剰な反応も自分たちがさも特権側にいると錯覚しているからである。トロフィーワイフのような感じで、白人女性が好きというよりかは、白人女性と付き合ってるオレカッケーしたい奴。それってかえってアジア人を蔑んでいることになっている。

逆にアジア系女性が白人男性といると白人男性がアジア人を食い物にしていると考える。たしかにアジア人フェチは結構いると聞くが、自分は白人と同一化したいのに…という矛盾もすんごく上手い。要するに主人公ベンってコンプレックスの塊なんだよね。さらっと言及されてたけど、おそらく高校時代のイジメが相当酷かったのだろう。透明化されてきたアジア系アメリカ人の受難をひっそりと描いている。

でも彼がそもそも人格が終わっているのも事実で、そこに女性蔑視があるから上記のような矛盾を抱えている。周りはコンプレックスなど抱えておらず純粋に生きているのに、自分だけは拗らせっぱなしで、自分の偏見に満ちた判断基準で相手の何たるかを決めつけて、相手を傷つけていく。共感度ゼロな奴だけど、どこか哀しさもあるキャラなのが良かった。

自分でも例外ではないなと思う。拗らせすぎるとこうなってしまう危険性が非常に感じられた。私も少なからず、「俺はこんなんじゃない!」って証明したくて偏見に満ちたジャッジをしてしまうこともあるので。マイノリティの中にも存在してしまっている・生まれてきてしまう偏見を本当によく描いていて自省になる。

crazy rich asiansみたいな映画を貶してるところから始まるけど、でもあれが今のアジア系映画の走りだったもんね。あれからフェアウェルやいつかはマイベイビー、パラサイト(韓国資本だが作品賞)、エブエブ、ビーフ、パストライブス、そして本作ってきたんだから。ミコとベンの双方の言い分、そしてラストはひっくるめてクレイジー・リッチ!への愛と感謝だね。

壁にHouseのポスター貼ってあった。ソノヤ・ミズノ久しぶりに見た。パタロンの前でスパイダーマンネタとか、映画の小ネタ多くて笑った。
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