垂直落下式サミング

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.0
お“手”軽。憑依体験。
母親を亡くした女性が、人の腕の形をした彫刻を霊媒とした死後の世界と交信できる降霊術遊びに興じた結果、自身も霊感体質となったことで、直面する壮絶な恐怖を描いている。サンダンス映画祭で話題となったオーストラリア産ホラー。A24配給。
僕は霊能力に関して、霊能力者はオーラ総量が高いから霊がみえて感じれるみたいなダサい少年マンガみたいな説明は、胡散臭くて好きじゃない。
強い弱いみたいな個体差によって優劣のつく能力じゃなくて、適性があるかないかはゼロヒャクの領域であって欲しい。だから、霊感のない僕らはまったく少しも感じることも見ることもできないんだと。そうすれば、つじつまがあう気がするから。
降霊術の設定が、よく考えられていると思う。「霊媒師の手を切り落として石膏で固めた像」というオブジェクトを媒介してガチャンと強制的に彼方側の世界とのチャンネルが合ってしまうことで、一時的に一般人も霊を感じられるようになるって設定は僕の好みの真ん中。
この降霊術には、本当に取り憑かれてしまわないよう条件と制約によるセーフティーラインが設置されているのも気に入ったし、なにをおいても厳守されるべきルールがあるということは、これが破られたときの危険性を示唆している。
誰でも憑依体験ができる。お手軽こっくりさん。この場合は来ないとか、霊感がないと効きが弱いとか、お調子者が怖がらせようとふざてたとか、そういうサムいのがなくて、手順さえ踏めば100%憑依されるのが面白い。ただ、ルールの外側に行った瞬間守られなくなるということに関しては、このバリューに見合った妥当なリスクであるな、と。
霊感のない人をムリヤリ覚醒させるのだから、当然の危険さもあって、手順違いや違反したりすると、チャンネルのつまみがバカになって、普段みえるはずのないものを知覚できるようになり、生まれつきの適性がない人間は無防備に攻撃を受けてしまうってことだと思う。
霊や魂というモノに対する僕の考え方に近い認識で作られた映画だったから、とても好感を持てた。
キャラクターの描写についても、表面的には明るい性格のようにみえるけど、いい加減不安定な主人公の心理であるとか、彼女がどうやって家族の問題や周囲の人間との関わりに折り合いをつけていくのかが物語の争点となっているから、ティーンエイジャーの悪ふざけが発端となって破滅を転がり落ちていくありきたりな定型に落とし込まれないのが新鮮。
主人公ふくめた降霊会の主要メンバーたちは、最初こそ印象が悪かったけど、それなりには真人間で、ギリ感情移入できる良調整。女友達と元カレ以外のパリピ連中は途中離脱してしまうのが残念。年上にまじって度胸試ししたいと名乗り出た弟君への態度をみるに、アイツらもそんなに悪い奴らじゃなかったと思うよ。