ヨーク

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのヨークのレビュー・感想・評価

3.6
まぁ面白いは面白かったんだけど、ぶっちゃけ特になんか言うこともないなぁという映画ではありましたね。でもなんか監督を務めたのはユーチューバー上がりの若手監督らしいから、そういう人が頑張るのは良いことだと思いますので面白かったよ! と言っておきます。
ちなみに本作のざっくりとした感想として「あんまり人が死ななかった」というものを事前にTwitterで見かけていて、へーそうなんだー、メインの登場人物が10代のホラー映画とか軽はずみにバカスカ人が死んでいってほしいけどそうじゃないんだー、でも事前にその情報を知ったことによって期待外れになることもないだろうから知った上で映画に臨めてよかったなー、とか思ってたんだけど、その事前情報を知ってて尚(全然人死なないな…)と思ってしまったので、これから本作を観る人でホラー映画を期待している人はいわゆるジャンル映画としてのホラーものというよりかはシリアス目の青春ドラマにアクセントとしてホラー要素があるよ、というくらいのものだと思って観た方がいいかもしれないですね。そんな『トーク・トゥ・ミー』でした。
だってこれ別にホラー要素無くてもいいじゃん! っていうお話なんですよ。ストーリーは母親が自死したというかなりヘビーな家族の問題を抱えたハイティーンの少女が巷で流行りの降霊術で遊んでたらとんでもないことになって、大親友とその弟も巻き込んで取り返しのつかない事態になっていく、というもの。
この降霊術っていうのがいわゆるイタコみたいなやつで、耳なし芳一よろしくびっしりと文字が書き込まれた石膏か何かで作られた腕を握ってタイトルにもなっている「トーク・トゥ・ミー」と呟くと目の前にお化けが現れる。んで続けて「レット・ユーイン」と発するとそのお化けが自身に憑依する(吸血鬼かよ)のである。そしてお化けに憑りつかれた人は、おそらくそのお化けの前世の人格を含めて恨みつらみや現世でやり残したことなんかを垂れ流すスピーカーのように豹変するのだが、その姿が周りの人から見たら面白い。そしてなんか憑依された本人も何かしらの快感を感じるらしい。そこら辺はセックスの暗喩のような感じもするが、直接的にはガキ共が夜中にパーティーのノリで集まってはしゃいでるっていうのはきっとドラッグを仄めかすものであろう。
うん、そうなんですよね。この映画は別にお化けとかが出てくるホラー映画じゃなくても自死した母親を含めた家族の問題を吹っ切ることができない主人公がドラッグにハマって自滅していくというストーリーでも成立すると思うんですよね。親友の弟が大人(に見える)姉の友人たちと肩を並べたくて「僕にもやらせて!」ってなる感じとかは実にあるあるな感じである。まぁドラッグとまでは言わなくとも酒やタバコに置き換えたら身に覚えのある感じになるのではないだろうか。
まぁそういう感じの映画なのでね、事ホラー映画に関しては、お前らの家族関係の話とかどうでもいいんだよもっと軽はずみに人が死ぬとこ見せろよ、と思っている俺としては肩透かしな映画であった。地味なんだよ、地味。親友の彼氏が昔主人公ともいい感じの関係になってたとか、そんなんどうでもいいんだよ。10代のガキ共が妙な降霊術にハマって…みたいなシナリオならもっと遊び半分で軽率に呪われて軽いノリで死んでいくのを観たかったよ。そんなちゃんとしたドラマいらないから! って感じでしたね。全然人が死なないと書いたが、この程度の被害規模なら現実の連続殺人鬼の方がよっぽどタチ悪いだろと思ってしまう。
まぁそうは言いつつも、その部分いらねぇというドラマパートも出来自体は悪くなくて別につまんないというわけではないんですけどね。10代の少女の繊細な心理描写というのは見事に描かれていて、あぁこんな風に周囲のことが見えなくなる経験は分かるなぁ、とも思うのだが、それならホラー映画じゃなくて普通の青春ドラマでやってくれよ…、ともなるのである。まぁラストのオチはちゃんとホラー作品ならではの綺麗なオチになっていたのでそこまで文句があるわけではないのだが、やや淡白で外連味に欠けるな印象は受けましたね。ネタ自体は面白いから余計に残念な気分になる。
とはいえ全くもってつまんない映画ではないので精神的に追い詰められていく10代のガキを見たい人にはおすすめです。
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