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落下の解剖学のchaooonのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.0
今年度アカデミー賞の作品賞含む5部門ノミネート作品✨
カンヌではパルムドールを受賞🏆✨

人里離れた雪山の山荘で暮らす家族に起きた父親の転落死事故。不審な状況から妻が容疑者として検挙され裁判が行われる中で、隠された夫婦の嘘や真実が顕になるヒューマンミステリー。

驚きの真実!終盤の逆転劇!正義は勝つ!信じるものは救われる!胸熱のラスト!
法廷劇ってそういうラストの高揚感がまた面白さの一つではあると思うんだけど、今作にはそれが一切ない。
殺伐としてそしてリアリティを十二分に感じさせられる作品だったなあ…

疑惑の状況から始まる物語。
裁判を追うごとに真実が明らかになり、妻の不利になるような証拠も出てくるし、終始真実は一体なんなのか!?って緊張感が半端ない作品!
裁判の論議とか会話劇に近いものもあったり基本は静かな展開が多く、そんな中で精神を研ぎ澄ませ集中力高めて観てた上、この結末…。
観終わってどっと疲れた…。

裁判の判決という一つの結論が最後には出るけど、果たして本当はどうだったのか?は実際のところはわからないモヤッとした締めくくり。
決定的な証拠がない以上、事実は誰にも分からない…夫がもし事故や自殺であったなら、それこそ死んだ本人から話を聞くより真実を知る手段はない。
第一発見者であり目に障害のある11歳の息子が、なぜどちらかに決めなくてはならないのか?って終盤疑問を持つ場面があるけど、ホントその通りだよね…今まであんまり疑問に思ってなかったけど、なぜはっきりしないことに期限付きで答えを出さなきゃならないんだろう…
世の中って実はこういうことは山ほどあるし、曖昧なものの上に成立しているのかなって思ったら、何だかすごく色んなことが分からなくなった。

転落事故の落下と、そういう迷宮や心の闇に落ちていく落下でもあるのか…怖い…

主人公は妻役でアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされてるサンドラ・ヒュラー。
夫婦仲が以前から険悪で揉め事があり疑惑の渦中の妻だけど、夫や息子への愛をしっかりと感じる場面だったり、動揺しながらも法廷で証言をする姿の繊細な演技は素晴らしかった。
でもそれ以上に終盤は息子のダニエル中心の物語だった。
真実が何かよりも、真実を何とするか?が重要な物語だったし、それを最終的に選び取ったのはダニエルだったように思えた。
人間には絶対的に感情というものが左右するわけで、そのフィルターを通すことで、真実なんていかようにも解釈できるし、自分から見た真実と相手から見た真実は異なるものだもん。
彼が盲目だってことも凄く象徴的だったわけよね。

そして最高に名演技だった愛犬スヌープ役のボーダーコリーのメッシ君はなんとパルムドッグ賞を受賞してるのね🏆🦮✨
物語のキーワンコだったけど、介助犬としてダニエルを導く存在ってとこもキーなわけだよね😋
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