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コロニアの子供たちのkuuのレビュー・感想・評価

コロニアの子供たち(2021年製作の映画)
3.6
『コロニアの子供たち』
原題 Un lugar llamado Dignidad/A Place Called Dignity
映倫区分 G
製作年 2021年。上映時間 99分。
ナチス残党によってチリに設立された拷問施設『コロニア・ディグニタ』を舞台に、施設に入った少年の目を通して隠された負の歴史を描くチリ・フランス・ドイツ・アルゼンチン・コロンビア合作ドラマ。

1960年代初頭、ドイツからチリに渡ったナチス残党によって設立された『コロニア・ディグニタ』は、労働・秩序・清廉さといった規範をもとにした、美しい共同体に見えた。
しかし、その裏では独裁者パウル・シェーファーによる管理・支配のもと、洗脳や密輸、拷問、殺人、児童虐待などが行われていた。
1989年、奨学生としてコロニア・ディグニタの学校に通い始めた12歳の少年パブロは、入学してすぐに集団を統治するパウルのお気に入りに選ばれる。
それはパブロにとって地獄の日々の始まりだった。
地域から隔絶された施設の中でパブロは不可解な出来事の数々に遭遇し、隠された闇に触れていく。。。

チリの "コロニア・ディグニダ(Colonia Dignidad)"は、元ナチス兵士のパウル・シェーファーによって設立された。
2010年に他界したシェーファーは、小児性愛者として知られていた。また、ピノチェト政権に反対する人々が拷問され、殺される秘密収容所としても機能していた。
因みにコロニア・ディグニダの設立者、パウル・シェファーは1996年以来、同コミュニティ内で行われた20人以上の児童に対する性的虐待の罪で指名手配され、八年間の逃亡の末、昨年三月アルゼンチン(ブエノスアイレス)で逮捕されてチリへと送還されている。
セパタ氏はピノチェト政権下において、シェファーが児童虐待だけでなく、四人の反体制者誘拐に関与していた罪を明らかにしており、コロニア・ディグニダとピノチェト政権との関係があったのかなかったのか。。。
マティアス・ロハス・バレンシは、タリン・ブラックナイト映画祭に出品した今作品で、そのすべてを覆い隠そうとしないのが賢明やと思う。
イカれたシェーファーは、あらゆる手段で群れを恐怖に陥れ、教訓を与えるためにサンタを殺すこともいとわない。
このチリ・フランス・ドイツ・アルゼンチン・コロンビアの合作映画には、ある種の夢のような質感がある。
おそらく、この国の全住民がどれほど洗脳されていたか、あるいはどれほどトラウマを抱えていたかを考えれば、妥当なことやとは云える。
パブロ(サルバドール・インスンザ)は賢い子供だが、大人たち、とりわけ、パウルおじさんハンス・ジシュラー)の云うことを聞き、信頼するように云われる。
彼もまた、そこにいる他のみんなと同じように孤独である。
彼はまた、誰もコロニーの門の外の世界について何も知らないこと、あるいは自分自身のセクシュアリティさえも知らない。
それが、この映画で最も不条理なシーンにつながる。
しかし、それは性的暴力にもつながる。
シェーファーの王国へのアプローチには、奇妙なパフォーマティブな側面がある。
『神はすべてを見ている』とある登場人物が云うように、確かに常に誰かが見ている。
今作品が時折奇妙な方向へ向かうが今作品においては歓迎すべきことでした。
ロハス・バレンシ監督は、コロニア・ディグニダで起こったことをひとつひとつ列挙するよりも、コロニア・ディグニダの抑圧的な雰囲気に興味を示しているようなので、この事件についての明確なテイクではないかもしれない。
しかし、その不気味さは拭いがたい。
どうやら、ビジャ・バビエラに改名されたこの場所は、現在観光客に開放されているようで、トリップアドバイザーには、『驚くような自然環境と一流の配慮の中で、休息と静寂を楽しむための居心地の良い雰囲気』と宣伝されている。
オーナーには失礼な話やけど、ブルドーザーで壊してしまうべき場所もある。
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