maverick

グランツーリスモのmaverickのレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
4.3
2023年のアメリカ映画。ゲームプレイヤーからプロのレーシングドライバーとなった、ヤン・マーデンボローの実話に基づく物語。監督は『第9地区』のニール・ブロムカンプ。


グランツーリスモは、ソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されているリアルなレーシングシミュレーションゲーム。レーシングゲームの中でも頂点に立つシリーズとして日本、世界で知られている。映画化は疑問でしかなかったが、このゲームを使ったレーシングドライバー養成プログラム「GTアカデミー」の優勝者を主人公にしたサクセスストーリーと聞いて納得した。彼の半生を描いた伝記ものとしても興味深いし、グランツーリスモというゲームの魅力も存分に伝わる。レースの描写も現実そのもので、リアリティが半端ない。期待以上の出来で楽しめた。

これがフィクションではないのが本作の最大の魅力。ゲームのチャンピオンが現実でも活躍出来るということを証明して見せた興味深い話。ゲーム内では優秀でも、現実世界では負け組に位置する主人公。父親には将来についてあれこれ苦言を呈され、スポーツ選手として優秀な弟に劣等感を抱く日々。そんな状況でも自分の力と夢を信じ続けた主人公は偉いし、プロジェクトそのものを立ち上げた人達の功績も素晴らしい。この主人公のように、優れた才能を発揮する術を持たずにくすぶっている人が世界には大勢いると思う。自分を信じること、そして自分が輝ける場所を見つけること、その大切さを本作は教えてくれる。多くの人の心を動かす熱く感動的な話だ。

実際のレースは想像以上に過酷。チャンピオンである主人公も何度も壁にぶち当たる。順風満帆でないからこその物語の面白さ。ひとつひとつ試練を乗り越えてゆく主人公に感動がある。それと同時に、主人公の優秀さも描かれていて爽快。「通用するはずない」「非現実的」と小馬鹿にしている人達をぎゃふんと言わせる展開が心地よい。グランツーリスモというゲームがどれだけリアリティを追及しているかを証明する話でもあり、その部分の見せ方も上手く出来ている。普段ゲームをしない人ほどこれには驚きだろう。日本のゲームがいかに優秀かを物語っている話でもある。メイドインジャパンであることが誇らしい。

自分も昔このゲームをそこそこプレイしてはいたが、ファンというほどではない。でもゲーム内での描写がそのまま劇中でも再現されていたりして嬉しかった。元々モータースポーツのファンである自分としては、レースでのリアルな再現度の方が興奮のポイントだった。実際のレースって莫大なお金がかかっており、それを再現することは困難だったりする。だからレースを題材とした映画作品って少ないんだよね。権利とかの関係もあるんだろうし。それを可能にした点において、本作はすごい功績だと思う。実際のゲーム内でもメーカーと契約してスポンサー関係にあるからこそ出来たことだろう。日産やソニーが本作に多大な協力をしてあることも大きい。現実のリアルな再現にこだわったグランツーリスモという作品性が見事表れていて素晴らしい。

主人公ヤンを演じるのは、『ミッドサマー』のアーチー・マデクウィ。オーランド・ブルーム、ジャイモン・フンスーらが共演。コーチを務める役で、『ブラック・ウィドウ』でレッド・ガーディアンを演じたデヴィッド・ハーバーが出演している。彼の演技がとても良くて、印象に強く残った。ブラック・サバスが良く似合う。


人間ドラマとして、カーレースものとして、そしてグランツーリスモというゲーム作品の紹介作品として優れた完成度を誇っている。鑑賞後にゲームやりたくなっちゃうね。グランツーリスモはリアルなレーシングシミュレーションゲームだけど、これがあれば車は欲しくないとはならない。リアルだけに、実際に車に乗りたいという気持ちにさせる。主人公はレーサーとして、まさにその夢を叶えたわけだ。本作を観ると、ゲームをやりたくなるのと同時に車にも乗りたくなる。久しく運転していないが、久しぶりにドライブしたくなったよ。
maverick

maverick