垂直落下式サミング

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.6
「俺たちでよォ!どうにかするしかねェんじゃあねーの?!」

新しい世界でも、工藤の金属バットが唸る。違う世界線であるからか、ジェンダーコードへの配慮か、工藤の暴力ハラスメントにボディブローでやり返す武闘派となった市川ちゃん。カメラを止めるな田代くん、もとい白石くん!アイツらが帰ってきたっ!
今回、コワすぎスタッフが検証しに突撃するのは、コロナ禍で仕事を失ったため、心霊YouTuberをはじめたという若者グループが、とある廃墟で撮影したという赤い女の映像。
これが、とてもコワい!幽霊が出てこないからって、怖いもの知らずな女の子が廃墟内で悪態をつくと音が聞こえ出すんだけれど、もしいまこの部屋に幽霊が本当に来ちゃったら、逃げ場を奪われて壁際に追い詰められちゃいそうな危機的状況の見せ方であるとか、姿をあらわした赤い女に追いかけられて走って逃げるカメラマンが振り向くと、刃物を振りかざした女が自分のすぐ後ろまで迫っているショック映像の体験性であるとか、とかく精神と肉体とに同時に負荷をかけてくる。
実録ハンディカムの妙技。モキュメンタリーの手練手管を熟知した白石監督のなせる技。振り向いたら赤い女がっ!のところはビックリしすぎて、女子みたいな声で「ひゃああッ!!」って言っちゃった…。恥ずかしかったな。
YouTuberの若者は、メジャーな邦画ホラーだとムカつく若者としてテキトーに処理されてしまう役どころなのに、コロナ禍による失業だとか、後に明かされる過去の傷跡だとか、草の根への愛がしっかりとあって、なかなかに寄り添いたくなるキャラクターたちだった。
一般人たちはかわいいのに、霊能力者が過去最高にツマンナイのはダメだったなー。白石作品に出てくる霊能力者は、たいていがクセの強い(人間性に問題のある)ヤツだけれど、最初の鬼村は強キャラ感を匂わせてるのに使えねえし、その師匠の元ヤン系は特に最悪。
今さら、こんなサムいキャラ…。この女が口を開くたびに、ゾワッとくる。鬼滅の刃の煉獄さんが、メシを食いながらウマイ!ウマイ!してるのをみたときに感じた悪寒が、中盤から終盤までずっと畳み掛けてくるからキツイ。煉獄さんは、その後の大活躍で好きになっていったけど、コイツは結局キライなままだったな。
狐憑きの家系に生まれたニーナちゃんとか、別世界の呪いに触れた江野くんとかをのぞけば、人間界最強クラスの呪術の使い手なのに…。威勢のいい言動がことごとくスベってて、すっげえムリだった。
コワすぎの魅力は工藤・市川・田代のキャラクターの掛け合いであって、コイツらの良さを引き出せるキャラクターが同伴すると、役者のアンサンブルの輝きが増す。呪いの世界のなりたちの意味付けだとか、異世界の攻略情報だとか、そんなもんまったくもって重要じゃなくて、僕はただ単にまたアイツらに会いたかっただけだったんだ。
主要キャラの個性の強さが売りなんだから、同伴は真壁先生とか宇龍院道玄みたいな、ある程度の常識人のほうがいいと思う。シリーズ化するなら、元ヤン師匠はさっさと殺して新しい人に替えてほしい。
気にくわないキャラクターにイライラもしたけれど、みたいものはみれたから結構満足した。続編が待ち遠しい。ストーリーに直接的な繋がりのあるシリーズものが苦手な僕にそう思わせるだけでも、相当なポテンシャルのあるシリーズだということは間違いない。