ヨーク

ヘル・オブ・ザ・リビングデッド 4Kリマスター版のヨークのレビュー・感想・評価

3.1
新宿のシネマカリテでやっている夏の映画祭、カリコレの七本目です。
タイトルだけは聞いたことがあったけど今回のカリコレが初見でした。いやしかし、誰がこの映画を4Kリマスター化しようと思ったのか知らないけど、そんなことする金があるんなら赤十字とか国境なき医師団とかに寄付しろよというのが率直な印象でしたね。まぁそういう第一印象なので面白いか面白くないかでいえば間違いなく面白くない。正直3.1というスコアでも高すぎるだろと思うほどの映画だったんだけど、好きか嫌いかって聞かれたら間違いなく好きな映画でしたね。
どうかしてるよな、って思うけど好きは好きなんだよ。冒頭なんかの施設(何の施設なのか忘れたけど別に何でもいいと思う)で防護服を着た作業員の姿が描かれるんだがその防護服がどう見ても何も防護していない。顎のあたりがガバガバで、新型コロナが5類に分類されてから緊張の糸が途切れた昨今のマスク事情と比べたらちょっとはマシかなくらいの防疫意識しかない感じで、多分ゾンビウイルス的なものを持ったネズミが上手く入り込めるように誘導している感さえあるぞんざいな作りなのである。
まぁそれはいいか、それは許そう。どう考えても予算のない映画だし衣装とかに金かけてられんよな。しかし、そこで冒頭の掴みとして一旦ゾンビ禍の始まりが描かれるのだが、映画はその後に場面が変わって何かテロ集団が建物に立てこもってわちゃわちゃやっているシーンに移るのだ。特殊部隊の隊員がその鎮圧に向けられるのだがダラダラとどうでもいいシーンが続いてお話が展開しない。俺はまずそこで寝ました。だってゾンビ出てきた! やったー! と思ったら場面転換してどうでもいいことやってんだもん。寝るよ、それは。
そして目が覚めたらパプアニューギニア(多分)に舞台が移っていて、さっきの特殊部隊の人たちが極秘任務がどうたらこうたらと言っているシーンでした。あとなんかマスコミ? 的な取材している姉ちゃんと兄ちゃんもいた。そこで初めて本作の主人公がその特殊部隊の人たちなのだと察しましたね。んで現地の部族と交流しながらそのマスコミ? のお姉ちゃんがおっぱい出したりしつつ、部族のお祭り的な儀式のシーンが描かれる。ちなみにその部族のシーンはどう見ても別撮りになっていて映像の質感も全然違うし主人公らしき特殊部隊の一行とも同じフレームには入らないのである。下手したらなんかのドキュメンタリー作品から素材を引っ張ってきただけなのではないだろうかとさえ勘ぐってしまう。さらに言うと金髪のお姉ちゃんがおっぱい出すのも全然必要とは思えない演出でおっぱい撮りたかっただけか、もしくはおっぱいでも出しとかなきゃこんな映画間が持たないだろという判断があったのだと思われる。
その辺で俺の中ではもう本作と真剣に向き合おうという姿勢は崩れ去っていて、スーパー銭湯でジェットバスとか露天風呂とかミストサウナとかを満喫した後にマッサージチェアでウトウトしながらスマホの画面を見るともなく見ているというくらいの心持ちでスクリーンを眺めていたので、もう何が起こっても穏やかで緩やかな心情でしたね。最後までそんな感じだったからリラックスしながら楽しめました。「野郎ども…大群でおいでなすったぜ…」というセリフと共に10人くらいのゾンビが現れたところとかフフフ…って笑いながら脱力するしかないだろう、そんなの。ゾンビとお話しながらのゆるゆるなバトルシーンとか赤ん坊とじゃれてるときの幸福感さえあったよ。後半も明らかにシーンの繫がりがおかしくてゾンビがワープしてきたとしか思えないところとか、劇場内でもずっと笑い声が漏れていましたからね。
タイトルが『ヘル・オブ・ザ・リビングデッド』なんだけど、どの辺が地獄なんだろう。居心地よすぎるだろこの映画って感じでしたよ。いや褒めてるわけではないのだが…。まぁそんな感じで口が裂けても面白かったとは言えないが、でも不思議と観て良かったなぁと思う映画だったのは間違いない。枠としては『ザ・ルーム』に近い枠ではないだろうか。どう弁護しようがクソ映画ではあるのだが、でも好きになっちゃう作品てのはありますからね。
あと序盤から後半まで目まぐるしく舞台が変わっていくのはファミコン時代のアクションゲームみたいでちょっと懐かしさは感じたな。まぁその舞台の変化ごとにメリハリとかはなくてずっと緩いままではあるんだが…。そのテレビゲーム的ステージ制でいくと、個人的には川ステージを観たかったな。あそこ飛ばされちゃったからな。まぁ川を渡りながら撮影する予算とかなかったんだろうなと思うし、その川パートがあったからといって本作が面白くなるわけではないと思うが…。
とりあえず観てもいいし観なくてもいいし、観たとしても真面目に観なくてもいいし途中で寝てもいいしでかなり緩く向き合える作品なのでそれは本当にいいと思いますね。いやいいかな…いいか…、いや良いとか悪いとかじゃなくてどうでもいいか…。うん、どうでもいいです。どうでもいいけど、俺は見て良かったと思ったよ。
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