Uえい

市子のUえいのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.0
やっとアマプラに帰ってきた!ちょっと前に上映していた気がしたけどいつの間にかアマプラに追加されていた本作。評判通り主演の杉咲花の演技がすごく、魅力的だがどこか空虚で突き放すような眼差しに「少女ムシェット」を思い出した。

市子があるニュースを聞き、アパートから飛び出すシーンから始まる。その後、婚約者の長谷川が市子を探すパートに入り、今まで彼女と関係があった人々にあたっていく。そして、彼らの視点から市子が語られ、彼女の過去や複雑な事情が浮かび上がってくる。時系列や視点の切り替わりが多く少し複雑な構成だが、スムーズに理解できて、語り方のスマートさを感じた。

徹底的に他者の視点から市子の存在を炙り出していく。外見や関西弁など、一見込み入った事情があるようには見えないが、細かな表情や間の演技で、暗部を見せていく。その過程で終盤、市子の妹の視点からのショットがあるのだが、この時の目や汗、鳥の囀りなど強烈なインパクトがあった。そして、ポスターなどにもなっている目元を手で隠すシーンは見られる事を拒否するポーズで、すっかり見る側に回っている観客をも拒否するようだった。結局、逃げた理由は明かされるが、彼女の本心は誰にもわからなかった。

市子の態度自体が、この作品が扱っているあまり表に出ない社会問題(ネタバレなので伏せる)のありようを示しているようにも感じた。シネマスコープの横長の映像なので背景(社会)と相対化された小さな市子がより際立って見えたのかもしれない。
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