垂直落下式サミング

エクソシスト 信じる者の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

エクソシスト 信じる者(2023年製作の映画)
3.7
ふたりの少女が、森へ行ったきり行方不明となってしまう。三日後に、ふたりは保護されたものの、不可解な言動を繰り返すようになり、ついには家族の目の前で怪奇現象が起こりはじめる。
悪魔憑きを扱った作品。1973年『エクソシスト』シリーズの正統続編。まじでヒットしてなくて批評も収益も散々だそうだけど、これを機にシリーズ全部まとめて廉価版ディスク再販していただいて、簡単に手元に置いとけるようになったらいいな。
ストーリーの脈絡をぶったぎるように、不快なものを矢継ぎ早にいっぱいみせて恐怖をあおるインサート式の編集は、一作目の『エクソシスト』のテイストを過剰に発展させた感じ。これはハロウィンシリーズでもやっていたけれど、ちょっと今回はやりすぎ…。
てか、画面がパッパッパッと切り替わるから、重要そうな小物や仕草をぜんぜんじっくり見られない。スピーディーってよりは、せっかちな語りに思えた。
最後の「どちらかを選べ!」っていう挑発と、その胸くそ悪い顛末については、人を強烈に孤立させる悪魔というものの性質と、個人主義による分断にあてはめていて、そこは現代的な新しい解釈でよかったと思う。
悪魔は、人間性を否定するような選択をせまって、それに応じた人のほうを、もっと深いどん底に落としてイジメる。悪の取引に屈してしまった心の弱い人間、その悲痛な叫びが大好物だから。
女の子達を救うために、いざ悪魔祓い。しかし、教会からの許可が降りず悪魔祓いライセンス持ち神父がドタキャンしてしまい、救急お隣のオバちゃんが自分を奮い立たせて悪魔に立ち向かう場面は熱い!そんならしゃーないわ!ワイが無免許でもやったんで!と、一世一代の覚悟を決めるときのセリフがよかったな。
「神様があの時、なぜ私を修道女になさらなかったのか。その理由がわかったわ。この日のために、私をあなたたちの側に住まわせていたのよ。」
ずっと後悔に苛まれて、なにも報われなくて、褒められたもんじゃない人生を歩んできた人が、今まさに自分自身の存在の意味を見出だした瞬間。熱いものが込み上げてくるセリフだ。
悪魔の不条理な罠によって罪を背負ったとしても、そんな憐れな人間を神様は悲しみとともに生かし続けてくれる。それには、きっと意味がある。なければならない。あるべきだと思う。
利他的なおこないのなかに、もっとも大切なものがある。神の本質は愛だと。だから、どうせなら人の善性を信じてごらんなさい。優しくそう言われているような、背筋の延びるいい映画だった。