垂直落下式サミング

ナックルガールの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ナックルガール(2023年製作の映画)
3.5
悪猿。
実は、俳優として王道ど真ん中なキャリアを重ねている伊藤英明さん。若い頃の当たり役の熱血漢主人公をしっかりとやりきったあとは、従来のイメージとは異なる役での評価を得て演技派へ脱却してみせ、最近はいい感じの悪役が板についてきた。
今回は、極道黒社会で暗躍する悪の親玉。サイコパス教師や、新撰組の芹沢鴨とかはやっていたし、仮面ライダーの映画のボスもやっている。彼自身も意識的に役柄を選んでいるだろうし、仕事を持ってくるマネジメントの人も優秀なのだと思う。とてもいい役者さんだということに、最近気づいた。
主役の女の子もよかった。眉間にシワをよせながら眼前の敵に凛々しい眼光を向ける三好彩花さんの健康的な肉体の魅力が弾ける。ひきしまったお腹に恋してしまいますね。
気が強いようでいて、妹のこととなると周りがみえなくなるメンタルよわよわお姉ちゃん。こんな精神的に不安定な女性ファイターが、バチボコ男にわからされてしまうシーンはとてもいいし、女だからって舐めてかかった男が血みどろで逆にぶちのめされるのも乙なもの。
ただ、日韓ちゃんぽんしたことで、おはなしが飲み込みづらい。てか、しょうもなかった。アタイはボクサーだから拳闘の拳で人を殺しちゃあなんねえってなまっちょろいマンガっぽい価値観と、警察がすげえ無能だし黒社会は国家権力に取り入ってるしって破滅的なノワールの世界観を、日本を舞台に日本人主演でやるって、なかなかムリがある設定だと思うな。
元K-POPアイドルとか起用して、韓国本国で作ってたら、また違うものになったんじゃないかな。てか、そっちのがみたい。
なんにしても、伊藤英明の悪漢ぶりと、最後にやられるところはよかったです。めっちゃ調子こいてるのに、なんかしょうもない理由(部下がガキンチョに銃を奪われるザコ無能だったせい)で逆転されてやられる姿ってのも、とても似合ってましたね。もっと惨めさがあるとなおよかった。彼の悪役キャスティングはもっと続けてほしいな。