きりん

オールド・フォックス 11歳の選択のきりんのレビュー・感想・評価

3.9
台北郊外に父親と二人で暮らすリャオジエ(バイ・ルンイン)。いつか自分たちの家と理髪店を手に入れることを夢見ている。ある日、腹黒いキツネと呼ばれる街の地主シャ(アキオ・チェン)と出会うことで人生のうねりを見せ始める話。


誰に対しても優しくて誠実な父親リャオタイライ(リウ・グァンティン)。
対局とも言える腹黒いキツネ(オールドフォックス)地主シャ。

時代は1989年。バブルで不動産価値がどんどん高騰していく。より貧富の差は激しくなり主人公たち父子も翻弄されていくのだ。

同級生にいじめられながらも夢に向かって倹約し生きるリャオジエの前に現れたシャ。この出会いが彼の夢への勢いを加速させ成長させていく。

ただただ夢を叶えたいっぷりが父親の優しさから遠のいて行くような感覚がとても寂しかった。「他人なんて関係ない」の言葉が心に突き刺さる。

シャもただ苦労せずして金や力を得た訳では無い。所有するゴミ処理場と高級車とのギャップが楽して今の地位を得たんでは無いと想像させる。だからこそもがくリャオジエに自分を投影させたんだろうと。

惜しむらくは亡き母親の夢である理髪店にここまで執着する理由がよく分からなかった。母親とのエピソードがほぼなかったので、そこをもう少し描いてくれてればより理解が深まったかも。

今回試写会(丸の内TOEI)での鑑賞だったので監督と門脇麦の登壇があった。門脇麦は父親の幼なじみの役柄で出番は少ないものの、愛のない結婚をし彼女ももがき苦しむ難しい役どころを熱演してた。そんな門脇麦が演者の眼差しを見てほしいと語っていた。

まさにで、11歳リャオジエのそれは目を見張るものがあったし、憑依したかのような目は忘れることはないだろう。
そして映画最後に見せた、父親とキツネから学んだリャオジエの選択、姿はグッとくるものがあった。印象に残る幕引きで良き台湾映画を観た満足感は高い。
きりん

きりん