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あずきと雨のBBのレビュー・感想・評価

あずきと雨(2023年製作の映画)
4.0
優れた映画はその一形態として、夢に似る。私は10代の家出少女ではないが、昨日今日会った知らない誰かの呼びようのない会話を寝ているふりして聞いてしまう状況は、知らない土地で誰かの家に泊まったときか夢の中か、あるいはたいがい映画の中だ。そういう機会や機微を描ける、そういう偶然聞いてしまったり話してしまった会話を大切に覚えている、ということが大事なのかも知れない。
登場人物がみな「わからない」や「何となく」ということを口にして、相手もそれをいったん受け取るように頷いたりするだけ。かみしめるには時間がかかる。この辺の演出は明確に狙っているんだろうけど、嫌味やあざとさがないのも良かった。人は節度をしょっちゅう間違える。宇宙人のような、ネコのような、ノブの行動や人柄を、あれは何だったんだろうと今後もユキはふと考えるだろう。相性というものが良くなかったのかも知れない。けれどもそれは他人がはたからアレコレ言うことじゃない。相性が支離滅裂でも切り結んだ時間と関係があることを、ノブとユキの何気ない視線や行動、会話から感じる。
わかっていたけどわかりあえなかった関係というのは、他人がはたから思うほど悪いものでも切ないものでもないのだろう。
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