あんじょーら

未帰還の友にのあんじょーらのレビュー・感想・評価

未帰還の友に(2023年製作の映画)
2.3
福間雄三監督   トラヴィス   吉祥寺アップリンク


友人のお誘いで、監督挨拶のついた回を観に行きました、市子の後だっただけに期待はどうしても高くなります・・・そして、映画に対して優しい気持ちになってました。


太宰治没後75周年記念作品、となっています。監督も初めての方。


太宰治の短編の映画化、です。


先の大戦末期、先生(窪塚俊介)と呼ばれる作家と思われる人物が上野駅で書生の鶴田(土師野隆之介)を待っていて・・・というのが冒頭です。


未帰還の、と言っているので、タイトルでネタバレなんですけれど、帰らなかった友の話しです。


まず、大変予算規模の少ない中で、よく完成させたな、とも言えます。何しろ、空襲、ジャングルでの戦闘、という戦争部分の絵がどうしても必要な作品なのに、映画化しようというのは、なかなかなチャレンジだと思います。そこを完成させただけでも、頑張ったと言えると思います。


監督のトークショーでは撮影が7日しか無かったそうです。


都内をいろいろロケハンして、昭和初期の色の残った場所を探し出して、撮影しています。


大変ご苦労されたんだろうと想像します。昔の面影を残す撮影現場ですから、カメラの画角が大変小さく(大きく引きの絵を取れない為と思われます)、バストアップくらいで引きの絵が無い為に、残念ながらとても狭い感覚があります。でも、役者さんたちは本当に頑張ったと思います。


特に、テントの中で寝そべったままの演技を強いられた方の演技は大変良かったです。


ムーランルージュ、今の人だとどういう事だかわかるのか?ちょっと心配になりましたし、その部分の、演出、脚本は完全に演者さんに任されていたのか、他の指導(字幕だと、劇団関係だと思われますが、ちょっと分からなかったです)なので、凄くこの部分は浮いた感じがします。


それに、仙台弁、というか、ある種の方言を使う鶴田さんの演技に最初は戸惑いました、何しろ、恐らく、ですが、太宰の文体のまま喋るので、少しクドイ上に先生は標準語なので、戸惑います。が、その戸惑いに慣れると、不思議と気にならなくなって、土師野さんの演技は悪くないと感じました。


1番良かった絵は、夕日の絵です。

フィリピンなど、南東に派兵された部分の撮影場面、凄く頑張ってるけれど、とにかく装備とか銃とかがほぼ無いので、大変厳しいと思います・・・人もいない中、頑張ってはいるんだけれど。


という感じで、良い部分もあり、残念な部分もあるとは思いますが、まぁ市子の後なので優しい気持ちになりました。


監督は貫禄のある年配の方にお見受けしましたが、監督作としては3作目、という事で、キャリアはそんなに貫禄は無いのだな、と思うと何となく納得。


太宰作品が好きな方に、オススメ致します。