ヒノモト

義父養父のヒノモトのレビュー・感想・評価

義父養父(2023年製作の映画)
3.7
濱口竜介監督の「悪は存在しない」で主演をされている大美賀均さんの初監督作品。

服飾デザイナーのリカの母親の再婚相手の双子の兄は、精神疾患の妻がおり、末期癌であるが故に、リカに養子に来て欲しいと頼み込む。一緒に過ごす中で家族のような感情を抱くようになるというお話。

ただ、このあらすじを本編内でほぼ説明がなく、俳優陣の演技の力量と端的に映像のニュアンスだけで見せるだけで、映画になってしまうことの様式美は存分に感じられるのですが、
上映後のトークを聞くかぎりでは、その思惑は伝わり切れていないことが分かります。

何でもかんでも、台詞で全部説明する必要はないですが、人間関係であったり、位置関係であったり、観る側に匂わせるカットなり、台詞なり、もう少しを残しても、今作の洗練された完成度は削がれないと思いました。

それでも、生前の想いとは裏腹に、残された者への重苦しい重圧が支配する後半の映像はすさまじく、60分のいう短さながらに、後を引く内容ではありました。

偶然にも同時期公開のギャスパー・ノエ監督の「VORTEX ヴォルテックス」と近い設定の物語でもあり、短いシナリオからアドリブ的に膨らませていく手法も同じで、少し不思議な気持ちにもなりました。
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