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Hellbender(原題)のhorahukiのレビュー・感想・評価

Hellbender(原題)(2021年製作の映画)
3.6
「免疫不全だから外に出ちゃダメ!」

…とママに言われて自宅軟禁されてる思春期女子が、「本当に免疫不全なの?」と疑問を抱き、次第に自分の奥底にあるものが開花していくフォークホラー。アダムスファミリー監督作。今作はママ&娘の物語。

魔法とか呪術のお話なのだけど、魔法で壁の中にカギを収納→手をかざすだけでヌーっとカギが浮き出てくる収納術が便利すぎませんかね😂絶対カギ無くさないし盗られる心配もないし。色んなものに応用できそう!

『アザーズ』的な“病気ゆえに外に出られない子ども”展開を、山奥にある自宅という閉鎖空間で行い、それをコロナ禍と絡めることで時代性を獲得しようとする試みかと思いきや、そういった浅いところで終わらせないのが流石のアダムスファミリー。ちなみに『The Deeper You Dig』のとこでも書いたけど、アダムスファミリーはパパ、ママ、娘×2(パパがジョンアダムズ)で映画作ってるからそう呼ばれてるっぽいです。だから読みはアダム“ズ”ファミリーになるのかな?

魔女家系の母は娘と一緒に山小屋に籠って暮らしつつ『Hellbender』っていうバンドを組んで誰に見せるでもなく娘と2人で演奏の練習してる。でも娘ちゃんが、山に遊びに来てたヤンチャな若者たちと偶然交流をもったために外に出たい欲がマシマシになり、ママとの関係がギクシャクし始める。そして魔女(親子)同士の思春期的な喧嘩が始まり…といった感じのお話。

2017年前後に良く見られた思春期女子変容系ホラーを採り入れ、自身のアイデンティティへの問いをビーガン的な観点を踏まえ、社会から要請される制約を受け入れた上での共生と、“自然”や“あるがまま”との相剋として描いている。そして“自然”や“あるがまま”は現実ではその対向概念をも取り込み敷衍していくため、結局は個別具体的な被投と企投の例示的な分析ということでしょう。

監督たちが撮影にあたり自然に大きな拘りを持っていることがそれらに多少なりとも寄与しているようにも見えるけれど、それはあくまでも疎外状態を是としないことに留める程度ではないかと感じた。つまりは(階上階下で表現されるような)主導権の問題。

ただ、その主導権を持った上での主人公の選択に“正解”を本作は求めていないように映る。意識の外に抑圧されたシャドーが、抑圧のあまりの強さ故にエネルギーを蓄えた結果の反動の下に本作は選択をしているわけであって、統合が行われているようには見えない以上、その選択すらも疎外であったとも考えられる。それ故にあの空間は暗いし、アイデンティティ空間でもあるので本来的な“自然”や“あるがまま”とはどういったものなのかを示すために用いているようにも映る。そのバランス感覚は実際に家族だけで映画作ってるからこそ生まれてくるもののように感じた。

『The Deeper You Dig』と同様に自然音への信頼が凄くて響いてくる音に迫力があったし、家族で旅行しながら撮影してるから風景が全部綺麗!思春期の子を持つ親子間の普遍的なイザコザを、フォークホラー&サイキックバトルとして味付けしたお話を親子で作ってるのがほんと仲良いんだなーってほっこりした。そんな話絶対親としたくないもんね😂パパさんが速攻で雲散霧消しちゃうあたりも仲の良さが滲み出てる!
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