今日の試写会はドキュメンタリー映画『ちゃわんやのはなし―四百年の旅人―』。
冒頭から歴史を絡めた導入に引き込まれる。秀吉の朝鮮出兵って、ただ負けて帰ってきただけじゃなくて、朝鮮から陶工を連れて(連行して?)きていたのか⁉︎
物語の中心になるのは400年続く薩摩の沈壽官家。第14代沈壽官は司馬遼太郎の「故郷忘じがたく候」の主人公としても有名だ。
秀吉の朝鮮出兵の際に島津義弘によって連れてこられた朝鮮の陶工が、あの「薩摩焼」を作り出した。
「薩摩焼」の名品は1867年のパリ万博に出品され、ロシアのニコライ二世にも献上され、現在エルミタージュ美術館にも所蔵されているなど、世界有数の美術品である。
400年前、日本に連れてこられて朝鮮の焼き物の技術を日本に伝えた彼らは、日本では「朝鮮人」で、韓国に帰れば言葉もわからず「400年で付いた日本の垢を落とせ」と言われ、二つの国の間でアイデンティティに悩み苦しむ。
父と息子。認められたい。乗り越えたい。
「薩摩焼」の物語は、400年続く文化の継承であり、それは「親と子」の物語でもあるのだ。
400年の歴史をつなぐ第15代沈壽官は言う。
「過去から学ぶ。時代は還ってくる。」
日本と韓国、親と子、そして匠の技。
『ちゃわんやのはなし―四百年の旅人―』は400年にも及ぶアートの伝承に迫る素晴らしいドキュメンタリーだ。
*韓国には家業を継ぐという概念がない、というのにはびっくりした。
*釉薬を使った焼き物はそれ以前には日本にはなかった、というのも知らなかった。