Paula

No.10のPaulaのレビュー・感想・評価

No.10(2021年製作の映画)
4.0
この映画を鑑賞する人がいるなら...
少しだけバカバカしい代物ととらえるのか? ちょっと紛らわしいけど、それでも謎めいているところに魅かれるのか? それは、観客にゆだねられていると思いきや、ところがどっこい!? 映画製作者に操られていることを後で思い知ります。

Günter: On the bridge you whispered
    a word into my ear, a foreign
    word. I can't repeat it.

Go-between: Kamaihi.

Günter: That word sounds familiar.
    What does it mean?

Go-between: Mum.

ベルギー語や(ドイツんだ)オランダ語を知らない者にとって東の尻尾を無くしたエイプのパンを中心とした朝食には欠かせなくて、尻尾をフリフリ買い求める「食べるプラスティック」が食卓にあったので、てっきりベルギーがロケ場所と思っているとどうもオランダナンチャッテね? 日本アニメーション制作の『フランダースの犬』同様にお話はベルギー、でも民族衣装にオランダ式の風車、すべてにおいてオランダなんてね?
実はそれほど細かな備品までしっかりと見ていた自分に驚く。
(※エイプの国ようにベルギーが決して悪いところではない。何故なら、消費者の選択肢を体に悪い影響が少しでもあるからという理由から規制をしてしまうオランダよりも消費者に選択肢をゆだねている証拠で、その代わりバターとマーガリンを消費者が分かり易く区別するために容器の形を変えている。)

Günter: Why are you a priest?

Innocence: I believe in the doctrine
      of Jesus.

Günter: I don't understand. You people
    have blues, you have jazz.
    Surely you don't need Jesus?

Innocence: `You people'?

Günter: I'm sorry that's not how I
    meant it.

Innocence: So how did you mean it?

Günter: Jesus is a white fabrication.

Innocence: Jesus is my friend.
      Pleased to meet you.

ラヴクラフトと本作の共通する世界観であり宗教観があるとするなら?
ファンタジーと SF の要素を自分の物語に組み込み、人間中心主義の脆弱性を表現する彼の哲学としての "宇宙主義" と本作『No.10』との シンクロニシティ(共時性)とは何か? ... それは本作でも登場する異星人との子、リジーの存在がオカルト的な部分も含んでいるからなのか。

※Cosmicism ➡ 「宇宙には神のような認識可能な神聖な存在は存在せず、銀河間の存在というより大きな計画において人間は特に重要ではない」と言われている!? 
繰り返すけど同じような言い回しが...
Cosmicism posits that humanity is an insignificant part of the cosmos and could be swept away at any moment.
(※ラヴクラフトの宇宙主義より)

映画も始まってから小一時間は、一風変わった "七つの大罪" について描いたソープオペラと思っていると意外な方向にシナリオは向かっていく。
終わり近くには、ギュンターのセリフが映画の本質を述べているようにも聞こえる。

Wassinski is going to preach a message there: Jesus saves. And in order to spread that message... you're gonna first convince the people on Lunabor that live they're leading is wrong. Worse than that, that they're lost souls. Only to tell them they can be saved. In other words: fooling a healthy person into thinking he's got a disease... in order to sell him medication.

ところで本作に御登場のルノボー星人の死生観を含めた宗教観は
God doesn't exist and after death there's nothing. ですって、そんなの最近の若い子たちとクリソツってか?

"Because you have seen me, you
have believed; blessed are those
who have not seen and yet have
believed." 
と主イエス・キリストがほざいた(下品な言い方)とされる『聖トマスの不信』を蹴散らかすほどの皮肉屋としか、ヴァーメルダム監督はあたしの眼には映っていませんけど... 何か?

この映画の魅力って、人類にとって基本的に人である証として必要不可欠な倫理観、宗教観、道徳観、そして価値観といったものが、宇宙規模ではそれらの扱われ方が何ら価値がなく、しかもプロット展開や構成が予想不可能なところかな?
Paula

Paula