【インドネシアのタブー】
※Netflix作品
ほぼセリフ無しのホラー・サスペンス作品だ。
途中、スタンリー・キューブリックの「シャイニング」へのオマージュのような場面もある。
このインドネシア映画「モンスター/怪物」は、こうした会話やセリフがない点で、”実験的”と考える人も多いと思うが、もうひとつ、インドネシアでは未だ批判はおろか議論することすらタブー視されている1965年、共産党狩りと称して100万人が虐殺されたとされる9月30日事件をモチーフに暗に批判もしたチャレンジングな映画のように思える。
この9月30日事件では、自ら志願した民兵が率先して赤狩りを行い虐殺を主導、そして、ターゲットが共産主義者(?)だったことや、国際社会がこの地域の安定化を優先させたことから未だに国際非難も行われていないのが実情だ。
ただ、虐殺されたのは共産主義者から鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具が提供されたことに感謝し、単に共産思想を擁護した地方で農業を営む平和的な普通の人々だったのだ。
タブー = セリフの不在
(以下ネタバレ)
暴走する民兵 = モンスター化する女
一般庶民の殺害 = 子供の誘拐殺人
正義の不在 = 警官の殺害
そんな示唆があるような気がする。
ただ、経済が発展し、民主主義が根付き始めたことで、たとえ表現をホラーに置き換えたとしても批判する姿勢がインドネシアには出てきているんじゃないかと考えたりする。
ところで、後半は、やっつけた!と思っていた相手が復活したり、負傷して歩くのが容易じゃなくても、しつこく追い回したり、更に、結末は……と、まあ、ありがちな気はするけれども、甘い判断もありながら、少女よ、よく頑張った!と思わせる(?)ような作品だ。
いつかインドネシアで9月30日事件について公に語れる日が来ることを願う。