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摩天楼のsuqのレビュー・感想・評価

摩天楼(1949年製作の映画)
3.5
公共性と社会奉仕を建前に個人を潰し、権力を握ったものが市民を支配することを是とする全体主義と、
富や名声にとらわれず、個人として仕事を全うすることを重視する個人主義との対立の物語。

ハワードに親愛と敬意を抱くことによってゲイルに変化が訪れたところがいちばん面白かった。
ドミニクとの間に連帯が生まれていく過程も良い。

一方で、肝心の主人公ハワードとドミニクのロマンスは、場当たり的で妙に湿っぽく、好きになれなかった。
ドミニクは仕事をしている時は理知的で、自信に溢れた素敵な女性なのに、こと恋愛となると何故か見苦しいくらいにジタバタしており、違和感が拭えなかった。
良かったのは、高層ビルがテーマだからか両者ともすらっとした高身長を活かしたスタイリングで、映画のテーマに合っていたところか。

最終弁論のシーン、1人で語るハワードと、画面いっぱいに人がひしめくなかでそれを見つめる全体主義の先鋒・トゥーイが短いカットで交互に示されるなど、画面の構成からも演出意図が感じられる。
採石場のドミニクの美しさなど、いいショットが多いのも印象的。
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