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ネイキッドのslowのレビュー・感想・評価

ネイキッド(1993年製作の映画)
4.1
世界の行方。そんなことは二の次で、毎日同じことを、同じ時間に、同じ物を胃に流し込みながら、今日を他人事のように見送り、出迎え、裏切りを回避するために、期待など何者にもせず、ただそこに存在したことだけを証明し続ける。だからと言って保証されるものは何一つなく、やはり、全ては二の次となる。

ハル・ハートリーのような映画を正しくイギリスで撮ったら、お洒落は哀愁に凌駕されてしまう。映画で観るこの国は何処かいつも寂しい。まるでディストピアな空気と、ブラックでコメディでフィロソフィーな会話劇。滅茶苦茶面白いかと聞かれると違う気もするけれど、人物全員個性的過ぎて顔面ややりとりは焼き付いているのに誰一人として名前を覚えていないのは、滅茶苦茶で面白かったということだろう。ブチ切れカップルの無駄なエネルギーが深夜に吸い込まれていく感じや、『タンポポ』の役所広司ばりに奇天烈な言動を続けるナルシストには笑ったし、夜勤の男や元彼女の冷静さには言葉の運ばせ方を学び、流れ続ける男の生き様からは何をもって最高を見定めるのかと問われた気分。でもね、そんなことは二の次で、ひとつふたつと夜が明ければ忘れてしまうよ。
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