ヨーク

動物、動物たちのヨークのレビュー・感想・評価

動物、動物たち(1994年製作の映画)
3.9
早稲田松竹でのニコラ・フィリベール3本立て特集の2本目です。
これは完全に勘違いしていた俺が悪いのだが、本作『動物、動物たち』は動物園のドキュメンタリー映画だと思っていたのだが蓋を開けてみたら博物館の剥製がメイン被写体の映画でかなりガッカリしてしまった。タイトルがタイトルだし『すべての些細な事柄』を観た直後だったし、人間の精神の自由さを描いた後は動物のあらゆる意味での自由さを主題にした映画なのかなーと思ったんだけど、そんなことはなかったね。自由どころかとっくに死んだ上で剥製にされとるやないかい、という感じで、多分同じ回で観た観客の中では俺だけなんだろうが思ってたのと違う衝撃を受けてしまった。まぁでもね、博物館の動物の剝製という題材もそれはそれで興味深いものではあったので面白い映画ではあったんですけどね。
映画の内容は上記したように博物館の剥製を描いたドキュメンタリー映画なのだが、少し付けたしておくと、舞台となるフランス国立自然史博物館は25年に渡って閉鎖されていたらしい。んでこのほど(本作は1994年の映画である)大規模な改修工事をすることになったようで、本作はその工事のさ中で数万もの標本や剥製が復活していく様子を記録した映画というわけである。
もうそれだけ書くとこれ以上は特に言うこともないという映画でしたね。『すべての些細な事柄』の感想文中でも触れたが本作もワイズマンっぽいタッチで被写体から距離を取ったドライな目線でナレーションとかもほぼないまま進行していくので中々文章で内容をお伝えするのが難しいのである。
ただ面白かったのは、長い間閉鎖されていた博物館の資料室や標本室を再整理していく様子が描かれるわけだが、その際に学芸員たちも初めて目の当たりにする資料とか剥製とかがあったようで、そのときのリアクションなんかが面白かったですね。「ワオ! この剥製は凄く出来が良いね!」みたいな感じでテンションが上がってる様はプラモデルとかフィギュアを触ってるときのオタク的な感じでちょっと微笑ましい。でもその対象は剥製なので当然何もリアクションはなく、ただ往時の面影が少し残っているだけという風情なのもまた物悲しさを感じたりもしていいのだ。
かつて生きていたものたちが剥製になって展示され、しかしその施設も閉鎖されてから四半世紀が過ぎ、そこからまた発掘されて光が当てられるという時間の経過とかがグッとくると同時に、各剥製の(そんなこと知らんがな…)とでも言ってるようなとぼけた風にさえ見える表情とか良かったですね。
59分というランタイムでサクっと観られるのもいい。これも面白かったです。『動物、動物たち』という繰り返しのタイトルもなんだかいいですね。
ヨーク

ヨーク