HAYATO

ファミリー・ツリーのHAYATOのレビュー・感想・評価

ファミリー・ツリー(2011年製作の映画)
3.9
2024年182本目 
楽園で暮らす家族の危機
『サイドウェイ』のアレクサンダー・ペイン監督が、名優・ジョージ・クルーニーを主演に迎え、第84回アカデミー賞脚色賞に輝いた人間ドラマ
ハワイで暮らす弁護士・マットは、愛する妻とふたりの娘に囲まれて幸福な日々を送っていた。しかしある日、ボート事故によって妻・エリザベスが昏睡状態に陥ってしまう。家庭のことを妻に任せきりだったマットは、反抗期の娘の態度に戸惑うだけでなく、妻の浮気の事実まで突き付けられ...。
原作は、ハワイ出身の作家・カウイ・ハート・ヘミングスの小説。
共演に、『きっと、星のせいじゃない。』のシャイリーン・ウッドリー、『6才のボクが、大人になるまで。』のニック・クラウス、『ザ・エージェント』のボー・ブリッジス、『マルホランド・ドライブ』のロバート・フォスター、『トゥモローランド』のジュディ・グリアらが名を連ねる。
ハワイといえば誰もが憧れるパラダイス。本作においてもハワイならではの美しい風景が多数登場するが、それらが目立つというよりも、そこに住む人々にとってはごく当たり前の日常が横たわっていて、どこに暮らそうとも人生には悲喜こもごもがあるということが伝わってくる作風だ。
『オーシャンズ』シリーズや『ゼロ・グラビティ』など、かっこいい役柄のイメージが強いジョージ・クルーニーが、妻や娘たちに振り回される等身大の父親に扮していて、弱った表情と怒りに震えた走り方がなんとも可愛らしい。本作での演技が新境地を切り開いたと評価されて、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのも納得できる。
昏睡状態にある妻が不倫をしていた事実を知ったり、長女には反抗的な態度を取られたり、次女は学校で問題を犯したり、先祖から受け継いだ土地の売却について決断を迫られたりと、さまざまな壁にぶつかるマット。いつ何が起きてもおかしくない人生の無秩序さをひしひしと感じ、相手を想う気持ちで辛い現実を乗り越える大切さを学んだ。家族が1つになったことを印象付けるラストシーンは秀逸。
第96回アカデミー賞で5部門にノミネートされたアレクサンダー・ペイン監督最新作『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』を見るのが楽しみだ。
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