垂直落下式サミング

ロスト・ワールド/ジュラシック・パークの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
倒産寸前のインジェン社は、財政危機を打開するためパーク再建計画に打って出る。そこで、本来のジュラシックパーク計画において、恐竜クローンを生産するための拠点だった離れ小島「サイトB」に猛獣ハンターチームを向かわせ、野生化した恐竜生け捕りにしようとするのだが…。
恐竜の種類は、ステゴザウルス、パキケフェロサウルス、パラサウロロフスなど、前作よりもかなり増えているが、これだけCGとアニマトロニクスの境目がくっきりして作り物まるだしの映画も珍しい。
そのぶん強化されたのは、派手な見せ場。足のうらで踏んづけられるとか、人が食われて滝が赤色に染まるとか、スピルバーグの悪趣味さがどろどろとにじみ出している。
特に怖かったのは、小さな恐竜コンプソグナトスの群れによる襲撃シーン。あの死にかたは、いろんな捕食シーンのなかでも、トップクラスの嫌な死にかた。個人的には、でかい恐竜のバクンッよりも、数段上の苦しみだと思う。捕獲隊のやつはいじめてたから因果応報だけど、最初のサンドウィッチあげる女の子のところとか無理だったもんな。
あんなもんは害獣ですよ。保護よりも駆除。根絶すべきだ。あれを見せられたあとだから、環境派な奴らのネイチャー信者な行動が目に余る。ティラノサウルスが育児してたとか、所帯染みててちょっとヤだったんだよな。
そんなで、キャラクターが全員好きになれない。会話にならない恋人のサラ、テロリストのニック、相も変わらぬクソじじいハモンド、みんないい具合にいけ好かないクソだから、相対的に皮肉屋のマルコム博士が真人間にみえるという謎。
ニックとか、ガチでやべえもんな。恐竜の檻の鍵開けて、ティラノサウルスの赤ちゃんを連れ帰ってくるとかいう最悪な行動をとってみんなを危険にさらすうえ、まったく罪の意識なしとかいうサイコパス。やってることの罪の重さがダイナソー級。地球救済会とかいうテロリスト軍団(環境保護団体)に所属しているらしい。なるほどね。
環境派をヒーローとして描いちゃってんのが、この時期のハリウッド・リベラリズムのクソなところ。このテの作品にありがちな、「主人公側の人間のほうが考え甘くて青臭い問題」を引き継いでいる。
サラとニックとか、超悪いやつだもんな。なんでコイツら報いを受けてないの?エコメッセージが流行ってた頃だからって、環境テロリストみたいな行いで人死にが出てるのに、なんか責任の所在が曖昧で終わってしまうのが良くない。被害出てるのはお前のせいだから!お前らは絶対に人様を糾弾できる立場にないぞ。
あと、この映画のジュリアン・ムーアめっちゃブスだよね。身体は特にガタイがいい感じでもないのに、二重あごでフレームインする残念ファーストショット。セレブの名折れ。
伝説的な車の宙吊りシークエンスのうらで、つがいのティラノサウルスに食われてしまうおじさんの死に様とか、最悪に後味悪いから嫌い。ロープ繋いで車の落下を食い止めてくれて、めっちゃ頑張って助けてくれる超善人なのに、なんでこの人死ななきゃならなかったんだろう。ニックとサラが真っ先に死ねばよかったのに…。
最後、惨状を目の当たりにして、これ以上は仲間を失いたくないと、雇用の誘いをきっぱりと断るローランドさんのほうがいくらかましな感覚を持っている。猛獣ハンターとしての仕事は完遂し、自然に真摯に向き合っていた。
ローランドを演じたピート・ポスルスウェイトはスピルバーグから高く評価されており、次作『アミスタッド』でも起用されている。