垂直落下式サミング

ザ・シューター/極大射程の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ザ・シューター/極大射程(2007年製作の映画)
3.5
巨大な陰謀に巻き込まれた凄腕スナイパーの逃走とサバイバルを描く骨太サスペンス活劇。『トレーニングデイ』『イコライザー』などで知られるアントワーン・フークア監督が得意とする法で裁けない悪が存在するなら、誰かが正義を代行するしかないというテーマを描く義勇譚だ。
マーク・ウォールバーグ演じるマッチョなスナイパーによる鬼精度の狙撃と、特殊舞台仕込みのステルスアクション的な近接戦闘とで、引きと寄りの両方の場面をバランスよくみせる堅実なアクションが見所。
キャラの描き方や作劇の面ではわりと豪快で大味感は否めない。最初の方で世捨て人のように犬と山で暮らしているマークを軍人が訪ねて来るのだが、軍用車のエンジンの写真を撮るふりをして実は車のナンバーを撮影していたのだ!というツッコミどころ満載のシーンがある。まずマークのプロフェッショナル感を示すためなら、ナンバープレートを見た瞬間数字を記憶し身元を追跡とかのほうが格好いいし、そもそもエンジンの写真を撮りたいという変な趣味に誰もツッコミを入れない。不自然きわまりない行動なのに現役の将校が「油断ならんやつだ」と一目置くような発言をするのは頭が悪いなぁと…。
ストーリーは、FBI捜査官のマイケル・ペーニャが思いの外物語内で重要な活躍をする役で、へっぽこな新米がマークに鍛えられてバディになっていき、歴戦の兵が新たな相棒を育て上げ彼と連携する姿が描かれるのは面白かった。
ラストでは、主人公は救いのない殺伐へと決定的に身を落としてしまったようで、自ら手を汚すことは決してハッピーエンドにはなり得ないのだと作品の最後に皮肉めいた不穏さを残す。ここがフークア作品の嫌いになれないところ。