Masato

レイチェルの結婚のMasatoのレビュー・感想・評価

レイチェルの結婚(2008年製作の映画)
4.5

評判はあまりよくないが個人的には大好きな一作。強烈な存在感を見せるアン・ハサウェイの演技力とホームビデオのようなチープさとドキュメンタリーチックな演出が強烈な没入感を与え、家族の抱える問題をリアルに抉り出す。あまりにも生々しくて辛いが心に深く刻まれる映画だった。

おそらく評判が良くないのはアン・ハサウェイ演じるキムがめちゃくちゃな性格だからだろう。自分勝手で周りを気にしない。控えめに言っても好まれるキャラクターではないからイライラするひとが多いと思う。でも自分は凄く愛おしく感じた。

自分が自分であることに凄く苦労していてずっと辛そうで、喧嘩になったり気まずくさせてしまうのがものすごく見ていて辛い。自分を変えたいと思っても変えられなくて結局家族を傷つけてしまう。自らの行いに対して十字架を背負い続けているし、それが尤もだと自覚している。でもつい本音が出てしまう。あまりに生きるのが下手でとても他人事とは思えなくて、涙の連続。

私はよくやってると言いたい。クスリに走らないし、なにより死なないだけ本当に強いと思う。でも家族は彼女の身勝手さに付き合いきれないのも本音で、誰も悪くないのに辛い思いをしているのが苦しい。

でもやはり母親がキムから逃げてしまっているという事実、最後にそそくさと去っていく母親をキムがじっと見つめるシーンで、どうしてこうなってしまったのかをうっすらと感じる不穏。辛いときにいつも母親がいなかったという過去の表れに見えた。だから逃げ先が母親ではなくクスリだったのかもしれない。クスリを絶ってやっと母親のもとへ逃げられるとおもった矢先であの対応をさせられたと思うと…余計に辛い。

劇中に良い言葉があった。「変えられないものを受け容れる冷静さを、変えられるもの変える勇気を与えてください」という言葉。キムは自分をありのままに受け容れることも大切だと思う。そのなかで家族のために変われるものを模索することが大切なのかな。自分との向き合い方を考えさせられた。

本作は一見幸せそうに見える家族が機能不全に陥っている家族であることをキムが家に帰ってきたことで抉り出される物語でもある。キムだけが壊れているわけではない。父親も姉も母親も…みんなが苦しい過去によってどこか壊れていて、ギリギリのところで歯車が回り続けている。でもなんだかんだ家族ってこんな感じ。自分だけかもしれないけど。上手くいかないことのほうが多いけど、やっぱり家族。上手く説明できない奇妙なしがらみ。家族というよくわからない集合体をそっくりそのまま表現して描いてみせている。本当に凄いと思う。リアルすぎて。作為さを全く感じさせないリアルさ。


手ブレ満載のあえてチープな映像とドキュメンタリーのような淡々とした作りがリアルすぎてドラマの切迫度が段違いだった。心臓に悪い。そしてアン・ハサウェイの演技力。凄すぎて語彙力失う。なんで受賞しなかったと思うくらい。ショーン・ベイカー監督作品に似ていた。
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