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レイダース/失われたアーク《聖櫃》のYYamadaのレビュー・感想・評価

4.1
【考古学者/インディアナ・ジョーンズ】

◆本作の舞台 〈1936年〉
 南米→コネチカット州→ネパール
 →カイロ
◆マグガフィン
 アーク/聖櫃 
 (モーゼの十戒を納めた契約の箱)

◆公開時の年齢
S.スピルバーグ: 35歳
G.ルーカス  : 37歳
H.フォード  : 38歳
I.ジョーンズ  : 37歳

〈見処〉
①古き良き冒険活劇を再び!
・『レイダース/失われたアーク』(原題:Raiders of the Lost Ark)は、1981年公開のアドベンチャー映画。「レイダー」とは「盗賊」を差し「失われたアーク」はモーセの十戒の石板を納めた「聖櫃・契約の箱」、ユダヤの秘宝の一つである。
・欧米ではビデオ化の際に『Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark』と改題されているが、日本では公開当時の邦題のままである。
・本作の舞台は1936年。南米チャチャポヤン遺跡に対する黄金の像の探索から帰国した、考古学者インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は、陸軍諜報部の訪問を受け、ナチス・ドイツがタニスの遺跡を発見して聖櫃(アーク)の発掘に着手したという情報が舞い込む。
・また、陸軍諜報部によれば、聖櫃の在り処を示す重大な手がかりラーの杖飾りはインディの恩師レイヴンウッド教授の手にあるという。ナチスより先に聖櫃を手に入れるべく、インディは聖櫃の争奪戦に臨む…

②インディアナ・ジョーンズ
・「ジェームズ・ボンド」よりも魅力的なキャラクターを!ジョージ・ルーカスにより、『007』シリーズの監督を望む友人スピルバーグに提案したキャラクターは、1930年代のアクション・ヒーローへのオマージュに、牛追いムチ、フェドラ帽、レザージャケットといった特徴的な服装がトレードマークである。ユーモアのセンスもあり、多くの古代文明と言語について深い知識を持ちキャラクターを創造。
・更に「ヒトラーのオカルト趣味」という実在の要素を掛け合わせ、『スターウォーズ/帝国の逆襲』のローレンス・カスダンが映画用に脚本化する事になった。
・当初、インディの役はトム・セレックが予定されていたのは有名な話。セレックは代名詞のテレビシリーズ『私立探偵マグナム』を選び、結局スピルバーグの希望にゆり、ハン・ソロ役としてでしか世界中では知られていなかったハリソン・フォードがキャスティング。本作によりマネー・メイキング・スターとなる。

③本作がもたらしたこと
・ジョージルーカスは『スター・ウォーズ』により、配給会社からの演出上の介入に嫌気が差し、完全自由な製作が出来るように「出資を受けるが、介入されない」「今まで以上の出来高報酬」を得るため、ルーカスとスピルバーグと縁の深い20世紀フォックスやユニバーサルと交渉も破談。最終的に配給を名乗り出たパラマウントは本シリーズによるロゴマークのフェードイン・オープニングにて、認知度を更に高めた。
・前監督作『1941』の大失敗にて、期限と予算を守らない監督としてレッテルを張られかけたスピルバーグは、ルーカス指導による「絵コンテの導入」「予算とスケジュールを守れないなら、私と監督交代する」とコストマネージメントの感覚を植え付け、本作から「早撮りスピルバーグ」が定着する。
・メインストーリーに直接関係ない、「ティザー(前フリ)オープニング」は本作から。
・ハリソン・フォードと親密だった脚本家のメリッサ・マシスンは、本作ロケ地にてスピルバーグと面識を得て、次作『E.T.』の脚本化につながる。
・本作は1800万ドルという中規模予算ながら、世界興行収入3億8000万ドルの大ヒットを記録。米アカデミー賞では、視覚効果/編集/美術/音響賞を受賞。またスピルバーグ監督が『未知との遭遇』に続く2度目の監督賞ノミネート。作品賞/撮影賞/作曲賞にもノミネートされ、ジョージ・ルーカスも『アメリカン・グラフィティ』『スター・ウォーズ』に継いで、三作品目の作品賞ノミネート。ルーカスとスピルバーグの時代が確立した記念すべき作品である。

③結び…本作の見処は?
○: シリーズ4作のなかで、最も時代背景に即した現実的なストーリー。アークを巡る各地での攻防にも説得力のあり、アカデミー作品賞ノミネートも頷ける。
○: シリーズのマグガフィンで最も神秘的な「アーク」。ラストシーンの処遇も秀逸である。
○: 本作の「ディザーオープニング」はチャチャポヤン遺跡による黄金像奪還シーン。砂袋を片手に緊張感漂う演出に派手さはないが、リアリティーのあるアクションシーン。
○: 敵役のベロック教授とインディのライバル関係はシリーズ随一。有名なハエ喰いシーンは、コマ・カットによる意図的な演出らしい。

シリーズ4作のなかで、最もバランスが良く、脚本の良さが光る傑作である。
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